相互微小伝達3 Interactive Micro Communications
仮想現実Virtual Realityの問題は近年、話題になっていますが、実は仮想現実は伝達のもつ側面の1つで昔からありました。近年になって、新たなネーミングをしただけにすぎません。対面で話をしていた時の時代でも、コトバで表現されている情報と実際の現実には乖離があります。まず現実と事実とは何かを理解しておく必要があります。事実はfactであり、そこに物理的に存在し、誰もが観察できます。現実はrealityであり、これは人間の認識の問題です。つまり同じ事実を、人により別々の現実として認識されるのが自然です。この現実を認識する人間の力を利用して、事実として存在しないものを現実のように認識させることができます。1つの方法としてコトバを利用する方法があります。たとえば文字は事実として見れば、紙などの媒体の上に乗っている墨やインクの塊にすぎません。しかしその塊具合を文字として学習した人は文字として認識し、それが現実となります。文字で「リンゴ」と書いてあるのを見ると、人は実物ではない抽象的なイメージとして、あるいは記号として、リンゴを思い浮かべます。これはリンゴの絵でも同じ効果があり、事実としては紙の上にある赤い絵の具の塊ですが、「リンゴの絵」として現実化し認識します。文字よりはより具体的ですが、実際のリンゴではない点は同じです。写真や動画もこの認識の延長線上にあります。違いは訴求力・アピール、つまりより強く印象に残る機能の違いといえます。手段はコトバ、絵、写真、動画と発達していきましたが、基本原理は同じです。
仮想のvirtualというのは目新しいことではなく、「(表面または名目上はそうでないが)事実上の,実質上の,実際(上)の」という訳語があり、光学でいう虚像のことを意味します。英和辞典には次のような例文があります。It was a virtual promise. (約束ではないが)約束も同然だった. 訳語でいう事実上という場合の事実とは上記で説明したfactではありません。ここらが混乱の原因となっています。実際に約束はないのですが、あるものと「みなす」ということで、それを現実として受け止めるということです。事実婚というのがありますが、法律的に結婚していなくても、結婚生活をしている場合を指します。事実上の結婚という考えです。
仮想現実というのは事実でないものを、事実であるかのように認識させるしくみや技術のことをさします。昔からあるマジックや手品も仮想現実です。錯誤や誤認識と原理的には同質です。それほど人間の認識の力が強いともいえます。
マスコミつまり大量情報伝達手段では仮想現実が大量に利用されます。そのためマスコミ情報を現実として誤認する人が増えます。一方でSNSのような微小伝達においても、文字や動画を活用する仮想現実が利用されます。原理的にいえば、マスコミもSNSもすべて仮想現実伝達といえます。「自分で見たことしか信じない」という人は仮想現実と現実の違いを理解していると考えられます。ただ情報量としては仮想現実が圧倒的なので、判断の際には迷いが生じます。
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