記章の非言語情報


家紋

記章にはいろいろな英訳がついていますが、emblemエンブレムというのが一番広く扱えそうな概念です。記章は服装の一部と考えがちですが、実は自動車のメーカー名を示すものや、警察のマークなど、エンブレムとは「概念や人物、家柄、所属組織などを表すための、抽象的・具象的な図形」のこととされています。徳川家の三つ葉葵などの家紋も、家柄を表すエンブレムです。学校の制服や帽子についている校章や、警察手帳などについている旭日章、弁護士のひまわりと天秤のマークもエンブレムです。どれも組織としての権威を示すものです。とくに資格として配布が制限されている場合には重要な情報です。

有名な「水戸のご隠居」は印籠に描かれた三つ葉葵を見せて、それだけでは足らないらしく、「こちらにおわす方をどなたと心得る?」と町人風情のお供が突然、侍言葉に変わって、非言語情報を言語情報で協調することで、相手を威嚇するというコミュニケーション方法?をとっています。

組織といっても社会的に明確なものばかりでなく、宗教団体、ファンクラブのようなものもあります。またブルーバッジ、ブルーリボン、SDGsバッジ、赤い羽根などを身につけることもありますが、これらは思想信条を表したものです。

エンブレムと似たようなものに、ロゴというのが近年は増えてきました。ロゴはロゴタイプの略語で、本来は会社名・商品名などを独特の字体・デザインで著したもののことです。現在の特許法では、会社名そのものには商標権がなく、ロゴにして初めて認めれられるという方向に変化しました。丸に越の三越は商標登録されますが、「みつこし」「Mitsukoshi」など、単なる言語表記には商標権は与えられません。デザイン性がないといけないのです。エンブレムとロゴの違いは、エンブレムが図形を表すのに対し、ロゴタイプは文字や文字列を表すという違いがあるとされています。また、ロゴは本来、対象を象徴するものではありません。

メダルもまた記章と似ています。スポーツの金メダルには栄誉が象徴されています。勲章も同じ機能ですが、軍事的や政治的な目的で使用されます。勲章は英語ではdecoration, award, medalと内容によって使い分けられています。Awardはなぜか日本ではアワードとして確定していますが、英語ではアウォードと読むのが正しいです。状況的に誤解されることがないので、日本英語として定着しています。

シンボルというのもエンブレムと近いものです。オリンピックの五輪はどう思われているのでしょうか。原理的にはシンボルなのですが、最近は文字ではなくてもロゴという人が増えてきました。文字と組み合わさっているせいか、ロゴマークという表現もあります。「万博ロゴマーク」として公式に発表されています。

記章やエンブレムは図だけでなく文字の組み合わせもあり、本来は非言語情報ですが、言語との関わりも強いタイプの情報です。

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