書き言葉は大切 1
最近の英語教育は英会話つまり話し言葉に中心があります。それは海外旅行が普及して日本人が海外に行く機会が増えたこと、そしてインバウンドと称する観光政策で日本に外国人がやってくるようになり、会話の機会が増えたことが原因だと思われます。実際には旅行に関わる会話は簡単なものなので、長く学習する必要もなく、現場での経験ですぐに習得していきます。学校では英会話を習わないか、習っても現場で役立つようなものでないとの批判もありますが、学校で英語を習った基盤があるからこそ、現場でも簡単に習得できるわけです。英語以外の言語との接触も当然あるのですが、スペイン語や中国語などは学校で習う機会がないので、簡単には行きません。
昔は海外旅行も夢のような世界でしたし、外国人がやってきて会話が必要になる、ということは稀でした。貿易は文書のやり取りでしたから、「コレポン」つまりビジネス・コレスポンデンスというビジネス英語を学んで、文書でやり取りができる能力が珍重されていました。ビジネスの世界では、今でも分野ごとに特殊な用語や言い回しがあり、学校で習う英語とは異なる世界がありましたから、専門職としてコレポンが読めて書ける人が必要だったわけです。そのためビジネス英語の専門学校もあり、大学にもそういう科目がありました。
現代ではコピー&ペーストが簡単になり、翻訳サイトもできて、そうした専門知識も簡単に利用できるようになり、わざわざ専門学校に行く必要もなくなってきました。文明の発達により、教育が変わっていくのは当然であり、時代とともに変化していきます。英語教育はその影響が最も強い分野だったといえます。
そうした文明の進化から想像すると、AIの進化はもうじき英会話も不要になると予想されます。すでに携帯用の翻訳機も市販され、音声認識システムを利用して外国語の音声が瞬時に翻訳されて文字化あるいは音声化されるようになっています。つまり英会話を習う必要性も減ってきているということになります。そうなると外国語教育そのものが不要になるでしょうか。そういう予想もありえますが、言語の壁はそれほど簡単になくなるとは思えないのです。言語は変化も速く、時代の変化が速くなると変化も速くなります。そしてなにより昔の言語が不要になる、とはいかないのです。
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