通訳の歴史


通訳・翻訳

通訳と翻訳は完全に異なるものですが、何となく外国語の訳という感じに理解されているせいか、誤解している人もいます。「英語ができる」というと通訳もできる、と思っている人は多いのではないでしょうか。

通訳は話し言葉の訳をする作業、翻訳は書き言葉の訳の作業であり、話し言葉と書き言葉の違いが大きいと訳す作業も困難です。もう1つ大きな違いは、何度も繰り返しているように、話し言葉は揮発性情報であり、書き言葉は不揮発性情報だということです。通訳の場合、瞬時に聞き取る必要があり、聞き間違いや理解ミスがあっても、そのまま継続し、書き言葉のように後から検証ができません。最近は録音も使われるので、後で録音から書き起こす記録で訂正されることもしばしばあります。それを通訳ミスとするのは酷だと思います。通訳とはその場の雰囲気を伝えるだけ、と考えるのがよく、正しい情報が伝わったと思わない方がよいと思います。

英語では通訳をinterpretation、翻訳をtranslationといい、別々の語になっています。Interpreteは通訳の他に「解釈」という意味があります。つまり、相手の言うことを理解して、自分なりの解釈をして、伝えるという作業ということになります。この解釈が問題です。言語が異なると、そのまま対応する語がないことがよくあります。日本語の「わびさび」など外国語にはないので、伝えるのに苦労します。結局wabi-sabiのような外来語にして、説明するしかないわけです。そうなると、書き言葉であれば、長々と説明したり、注釈を加えることで、より詳しい説明ができますが、話し言葉の通訳の場合、その場で即席で伝えなければならないので、大層困ります。説明していると次の話題に行ってしまうこともしばしばなので、通訳としては機転が要ります。

文字が異なる言語では文字そのものが読めないため翻訳の前に文字学習をするか、文字変換をする必要もあります。これを字訳transliterationといいます。日本人には普通読めない朝鮮語文字(ハングル)やキリル文字(ロシア文字)などはアルファベットに変換するか、強引にカタカナにすることもあります。そうすることで原語の音韻が想像できます。ただそれは日本語的解釈なので、その音韻は言語とは異なることも理解しておく必要があります。通訳、翻訳、字訳にはそれぞれ役割があります。

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