日本の翻訳の歴史 1


志賀島

通訳の歴史も西洋と日本ではかなり事情が違いますが、翻訳の歴史もかなり違います。

日本における翻訳は西暦284年ではないかと考えられています。日本に初めて漢字が取り入れられたのが284年であるとされているそうです。しかし日本人が漢字に最初に出会った時期はもっと古く、金印(福岡県志賀島出土)や銅銭(長崎県シゲノダン遺跡出土)などから、1世紀ごろだと推定されています。今は日本語の一部として使われている漢字ですが、そもそもは全て漢字で構成されている中国語を読むために取り入れられたようで、当初は誰もその漢字を読むことができなかったでしょう。5世紀ごろになると、日本で制作された鉄剣や銅鏡に、日本の地名や人名が漢字を用いて記載されるようになります。稲荷山古墳出土の鉄剣の銘文には「乎獲居(ヲワケ)」「意富比垝(オホヒコ)」という人名、「斯鬼(シキ)」という地名が刻まれています。江田船山古墳出土の鉄剣の銘文や、隅田八幡宮伝来の銅鏡にも人名・地名が漢字を用いて記されています。ただし、これらの品の製作には渡来人が関わっていた可能性が指摘されています。そこで日本人は漢字ばかりの中国語を音読みと訓読み、順序の入れ替えなどを用いて、日本語に翻訳していったと言われています。それが漢文のもととなっています。

このように翻訳自体は古代から存在していました。日本で英語の翻訳が行われたのは江戸時代初期のことで、イギリス人のウィリアム・アダムスが翻訳を行ったとされています。ウィリアム・アダムスは日本に漂着した後、三浦按針という日本名で武士として生活をした人物です。徳川家康との関係も有名です。

初めて日本人の手で英語の翻訳が行われたのは、江戸時代後期のこと。アメリカ人から英語を学んだ堀達之助が、最初の英語翻訳者だと言われています。日本が外交を始めるきっかけとなった日米和親条約は、堀達之助が中心となって翻訳されました。

また、堀達之助は和英辞典の編纂にもかかわっています。つまり、現代の日本における英語の基礎を築き、英語翻訳を後世につないだのは堀達之だとも言えるでしょう。英語の前にとポルトガル語やオランダ語が来ており、蘭学として解体新書のようにオランダ語から翻訳された専門書もありますが、少数で、明治以降英訳が広まりました。

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