言語習得にかかる時間
「子どものように外国語が習得できたら」とか「子供のうちに外国語学習を」と考える人がけっこう多いのに驚きます。では子どもが母語を習得するのにどのくらいの時間がかかるか計算してみましょう。まず赤ちゃんは1日のうち、ほとんどを寝て過ごします。新生児の睡眠時間は15-20時間だそうです。4カ月を過ぎる頃から12-16時間になるそうです。言語は起きている間しか接触できないので、細かい計算は脇において、12カ月までに言語と接する時間おおよそ10時間と想定すると1年間に3,650時間となります。実際には寝ている間に夢を見たりして、言語を使っている可能性もありますが、調べようがないので、とりあえず、3,650時間としておきます。この頃までに音韻が固まるとされています。そして3歳までの二年間は1日16時間は起きているとすると、16x365=9470です。この頃は夢を見るでしょうし、夢も母語で見ますから、加算して約1万時間で、3歳までの合計が約1万5千時間を言語習得に費やしたことになります。そして3歳までに基本的な文法は習得されているといわれます。この時期までは2語文などが多く、会話もどうにか成立します。その次の段階が6歳で、この時期がいわゆる言語習得臨界期で、母語習得はここで完成するとされています。そこまでの時間が約3万時間です。これで言語習得が終わるわけでなく、社会的な言語の習得は12歳頃まで、さらに教育や社会経験によって、言語習得は続きます。
「子どものような言語習得」というのは6歳までの母語習得という意味であれば、そこまでに3万時間かかっています。よく「学校で6年も英語を習った」とか「大学まで10年間も英語を勉強した」という人がいますが、実際には週に5時間程度の学習であり、学校以外に一生懸命勉強したとして週に10時間、年間毎週勉強しても50週で500時間です。このペースで3万時間を消化するのには、60年かかる計算です。6年間の学校教育では6歳児の10分の1レベル、1歳児にも追いついていない計算です。しかも英語を一生懸命勉強する、という前提ですから、授業中に友達としゃべったり、遊んでいてはダメです。そしてもっと問題なのは、実際の英語に触れる時間も半分は日本語、半分は日本英語で、生の英語に触れる時間はほぼないに等しい状態です。何年やったかは関係ありません。年に1回を10年続けて10年やったとはいえません。
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