利他の心



「利他の心」というと宗教者の説教な感じをうけますが、そうではなく、小林武彦先生という生物学者のお話です。「生物はなぜ老い、そして死ぬのか」小林 武彦(東京大学 定量生命科学研究所教授)2023年度 軽井沢土曜懇話会 第2回という講演の中での話題です(https://www.youtube.com/watch?v=ujN8LTepZ9g)
詳細はyoutubeをご覧いただくとして、小林先生は「老後があるのはヒトだけ」という興味深いテーマと同時に講演のおしまいの方で「老いの意味」について語られ、「老いとは、社会貢献にあった」「利己から利他への意識の変化」と述べられています。高齢者には大変、ありがたいお話です。うなずける部分も大いにありますが、この「法則」がヒト一般に当てはまるのか、疑問が残ります。というのは、この説は日本人には腑に落ちる面もあるのですが、外国人の多くは高齢になっても利己的な人が多いように思えます。無論、例外はあるので、それも一般化できませんが、外国の高齢者は日本人のような利他性はあまりないような印象です。個人的印象ですが。
日本人でも政治家の多くが高齢者ですが、果たして利他的でしょうか。裏金を作って買収に使うような人は、確かに他人に利を与えてはいますが、最終的には自分の利益が目的です。
定年を過ぎた高齢者がボランティア活動や社会貢献に目を向けることは確かに多いのですが、それも経済的に余裕のある人に限られるのではないでしょうか。生活に余裕のない孤独な老人が利他的かどうかはわかりません。
古来「衣食足りて礼節を知る」の例え通り、利他的になるのは衣食が足りている人々であり、日本では年功序列的な給与体系がまだ存続していて、高齢者ほど生活に余裕ができているから「利他的になれる」、という論法も成り立ちます。また若くても社会貢献を目指す若者も大勢いますから、年齢と利他性の相関関係はきちんと社会的検証をしないといえない結論のような気がします。小林先生の講演の前半は専門だけあって説得性があるのですが、後半は推論だけで「科学的」とはいえない印象でした。とはいえ、老後がヒトにしかない、というテーマは興味深いです。そして老後を否定的に考えず、肯定的に捉えるという視点には賛同できます。

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