初水天宮
旧暦1月5日に水天宮にお参りすることを初水天宮といい、初詣とは別の意味があります。初水天宮とは1月5日に東京か福岡県のどちらかの水天宮に参拝することです。水天宮は水と子供を守護し、水難除け、漁業、海運、農業、水商売、また安産、子授け、子育ての神様となっています。東京の水天宮の歴史は江戸時代までさかのぼります。福岡県久留米市の水天宮を信仰していた久留米藩主第9代の有馬頼徳(ありまよりのり)が、参勤交代の間、江戸でも参拝できるようにと分霊を祭ったのが始まりです。東京の水天宮には、天御中主大神(あめのみなかぬしのおおかみ)、安徳天皇(あんとくてんのう)、建礼門院(けんれいもんいん)二位の尼(にいのあま)が祀られています。天御中主大神は日本の神々の祖とされ、安産・子授けにも御利益があるとされています。それは、ある妊婦、参拝に訪れたことを知らせる「鈴の緒」のお下がりを腹帯にしたところ、想像以上に安産だったという逸話があるからです。鈴の緒には晒(さらし)が使われていたことから、水天宮では「御子守帯(みすずおび)」と呼ばれる腹帯を巻き、安産祈願をします。
安徳天皇とその母である建礼門院と祖母二位の尼も水天宮の祭神です。平家物語でも有名な話ですが、わずか8歳で壇ノ浦に身投げしたといわれる安徳天皇は、水の神・子どもの守護神として知られています。元は悲しいお話ですが、こうした受難の人を神様として祀るのは日本文化の特徴といえます。1月5日の初水天宮は縁日で、多くの人が参拝に訪れます。普通、縁日というと、出店などが並ぶ祭りを思い浮かべる人が多いと思います。しかし本来、縁日とは「有縁(うえん)の日」「結縁(けちえん)の日」のことで、神仏の降誕や示現(じげん・神仏の力や御利益が現れること)といった、特定の日を指します。縁日に参拝して神仏と縁を結ぶことで、より多くの御利益が期待できるといわれています。水天宮の場合は毎月5日が縁日で、初水天宮はその年で最初の縁日に当たるのです。福岡県久留米市の水天宮の境内には、水神社、千代松神社、秋葉神社、眞木神社の4つの神社があります。水の神と安産の神を祭った水神社は、左右に鎮座する「肥前狛犬(ひぜんこまいぬ)」が特徴です。この狛犬の「痛い部分をなでると、痛みが和らぐ」という言い伝えがあり、「なで狛犬」とも呼ばれます。千代松神社には、水天宮の創始者であり、のちに名を千代と改めた伊勢が祭られています。(参考https://hugkum.sho.jp/563363)
水天宮は東京と福岡県以外の人にはあまりなじみがないかもしれませんが、久留米市の水天宮を総本社として、全国に27社あるそうです。北海道、山形県、福島県、茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、兵庫県、愛媛県、福岡県、佐賀県、熊本県、宮崎県、鹿児島県にあるそうですが(https://ja.wikipedia.org/wiki/水天宮)四国にないのが特徴的かもしれません。水に関係が深いので、海のない県は少なく、海のある県に多いのも当然かもしれません。
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