味の素
7月25日は味の素の日だそうです。明治41年(1908)4月24日、東京帝国理科大学教授池田菊苗博士は昆布だしのうまさの正体がグルタミン酸であることをつきとめ、うまいと感じるものの正体をうまみと命名しました。そしてグルタミン酸を調味料にするため、ナトリウムを加えて濃縮する技術を開発し、同年7月25日に製造法の特許を取得しました。その後、鈴木製薬所に製品化を依頼し、明治42年「味の素」という製品販売を始めました。現在の味の素株式会社は鈴木製薬所の鈴木三郎助が創業したものです。
味の素は昔のテレビの料理番組にもたびたび登場しましたが、その時は商品名を避けるということで化学調味料とされ、レシピの中に「化学調味料少々」みたいな感じで放送していました。今ではうま味調味料という名になっていますが、最近は添加物を入れないという流れで昆布だしやカツオ出しが使われています。変則的ですが昆布茶とか顆粒ダシも使われています。
アメリカでは長く、味の素をMSG(monosodium glutamate)と呼び体に悪い影響があるという説が流布されていました。日本に来たアメリカ人の多くがそれを信じていて、日本食にはMSGが入っているから食べないという人もいたほどです。中にはMSGのことを知らない日本人をバカにしている人もいました。一方、中華料理では必需品になっており、昔の中華料理では必ずといっていいほど、最後に味の素を大量に入れていました。また東南アジアでは粗悪品のグルタミン酸ソーダが作られ、広く販売されているのをみました。
現在、米国FDAは「MSGが体に悪いという証拠はない」という消極的承認になっています。MSGはそもそも昆布などの自然食品の中に自然に含まれている成分で、サトウキビ、甜菜糖(ビート)、コーンスターチなどから合成されているので今でいう天然由来ということができます。少し前までは、お中元やお歳暮の定番として贈答品になっていましたし、煮物や漬物に味の素を振るのが普通でした。今の食用油を贈答するのと同じ感覚です。
うま味そのものについての研究成果がでてきたのは比較的最近で、2000年に舌の味蕾にうま味を感じる細胞があることが発見されました。うま味にはグルタミン酸の他にイノシン酸やグアニル酸などがあることが知られています。日本では昔からダシをとる文化があり、うま味についてはなじみがあるのですが、西洋料理ではうま味という感覚がなかったようです。その理由はどうやら硬水にはうま味成分が溶けだしにくく、ストックなどの料理法があっても関心が向けられなかったようです。軟水を利用する日本では早くから知られていたわけです。そのため欧米の学者はうま味は塩味や甘み、酸味などの複合的な感覚と考えていて日本人学者の主張を否定してきました。現在ではうま味はumamiという英語になっているのはそのためです。MSGに否定的であったのもそのせいがあるかもしれません。ラーメンやダシが重要な日本料理が世界に広がっていることの背景には西洋人がうま味に気がついたということが背景にあるかもしれません。
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