春社
春の社日を略して春社といいます。そもそも社日は他の雑節に比べて知名度は低くなりました。雑節は二十四節気とは別に日本独自に設定された旧暦の行事です。節分、八十八夜、入梅、二百十日、土用などはよく知られていますが、社日や半夏生は知名度が低いようです。春の社日は、種まきをする前に土地の神様に挨拶をする日のことで、秋の社日は収穫をする前に土地の神様に挨拶をする日のことで、農業と深い関係があります。日本は昔から農耕が中心とした生活だったので、種まきから収穫までがとても重要な意味を持っていました。その一つが「社日」になります。社日の「社」は、その土地の近くにある神社の神様である「産土神(うぶすなかみ)」からきており、社日が産土神を祀る日となりました。社日は、春分と秋分に最も近い戊(つちのえ)の日ですが、今年の春分の日は3月20日で、もっとも近い戊の日が15日と25日です。どちらを選ぶかは、厳密には春分点を通過する時間から計算することになりますが、それだと15日のようです。しかし旧暦はもう少しアバウトですから、25日という人もいて、今年は統一されていません。25日は満月ですから、生命の充実、潮の満ち引きなどの自然を感がえると25日がよいのかもしれません。
春社では米や麦など、場合によっては野菜などを地元の神様にお供えして、五穀豊穣をお祈りします。土の神様なので、魚や貝などの海や川などの産物は避けます。産土神は土地の神様なので、土いじりや農業などは避けるべきと考えられています。産土神は、土地の神様と言われているものの、土地に根付いているというよりかは、その土地に生まれた人に一生ついていると言われています。そのため、後に引っ越しをして土地を離れたとしても、産土神は生涯に渡って自分を守ってくれるありがたい存在と考えられています。地元に住んでいる人は地元の神様に、地元を離れた人も同じ神様を祀っている神社に参詣されるとよいと思います。
土を掘り起こすことはタブーですから、建築工事やガーデニングなども、この日だけは避けた方が無難です。土をいじることは産土神への敬意を欠いているとみなされます。こうした習慣を迷信として排除したのが明治政府ですが、戦後も科学万能主義になって、合理的でない、とか納期の都合とか、の理由で無視する人が多くなってきましたが、これらの習慣は、日本の自然と共生する文化の一環として、長い間受け継がれてきたものであり、尊重すべき理由もあります。現代人は災害が起きてから、防災を騒いだりするようになりましたが、すぐに忘れてしまいます。普段から自然に尊崇の念をもち、自然と共生するような生活をしていれば、急に防災として騒ぐ前に日頃から備えをしておく気持ちになれるものです。こうした昔からの習慣や行事はあえて宗教と結びつける必要はなく、神様という具体的な形で経緯を払う生活態度そのものが、自然との共生を必然的に理解するものです。社日には産土神にお参りされてはいかがでしょう。
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