記憶と忘却


記憶と忘却

インパクトの強いこととか、興味のあることは忘れないものです。しかし、そういう強い印象のあることはそう多くはありません。人間にかぎらず記憶量には制限があります。次々にやってくる記憶を留めておくには、不要なものを削除して余裕を空けるしかありません。脳はどうしても残しておかねばならないこと、たとえば命の危険の経験とか、楽しくてまた経験したいこと、などは記憶に残ります。それでも長い間には「いい思い出」に圧縮して余裕を空けようとします。

何の意味も感じない興味のないことはすぐに忘れてしまいます。それは覚えなくてはならないことでも、同じことで、がんばって覚えてもすぐに忘れてしまいます。こういう忘却についてはいろいろ研究がありますが、有名なのはエビングハウスの研究です。単純化すると、1日たてば記憶の2割は忘れてしまう、という原理です。とはいえ一日で1000語覚えたら、8割の800語は残るという意味ではありません。一度に覚えられる量は人にもよりますし、内容にもよりますが、不通はせいぜい100個程度、気楽に覚えられるのは年齢にもよりますが、若い人でも20個くらいでしょう。そうすると記憶量は16~80が普通ということになります。それもさらに一日たてば、その8割ということですから、その量は0.8のn乗で、1週間もすれば2割程度に減ってしまう計算です。もし来週のテストのために100個覚えなくてはならないとしたら、1日目に100個覚えて、忘れていく20個を毎日復習していく、という方法が現実的です。よく100を6で割って、1日17個ずつ覚える、ということを考えがちですが、これだと忘れる速度の方が早くて、残るのは最後に覚えた17個の8割ということになりがちです。「毎日すこしずつ」というのはそういうことではありません。「やる気のある最初にがんばって、後は忘れないように補充する」ということを毎日続けるのが正解です。何度も繰り返されたことは記憶に残りやすくなるので、補充する内容は毎日変わり、「忘れた分だけを補充」すればよいので、苦痛はかなり減るでしょう。初めて見るものと前に見たことがあるものでは親しみというか、覚えやすいものです。その時、「また忘れた」という否定的な感覚にならないことです。「あ、そうそう」くらいの軽い感じが気楽です。忘れたということは興味が薄いということであり、あまり必要がない、と思ったということでもあります。よく連想で覚える、というような方法がとられますが、連想によるおもしろさが覚える動機になっているわけです。歴史の年号を語呂合わせで覚ooえるのも、1192がイイクニ(いい国)という意味につながるので、おもしろいと思うわけです。数字のような無意味な記号の場合はそれもよいと思いますが、英単語のような意味をもつ記号の場合はむしろ英語のもつニュアンスを勉強する方が効果的です。Bookを本として覚えるのではなく、book=記帳する、という意味から「予約する」という意味の広がりを学習すれば、Do you have a book?(予約されていますか?)という日常会話の方が有益だということがわかります。

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