穀雨


穀雨

本日から二十四節気の穀雨に入ります。「穀物を運んでくれる春の雨」の意味です。春ももう終わりになり、もうすぐ初夏になり、葉の緑が目に映る季節ですが、雨もよく降る季節です。その雨も春雨のような細かな雨から、梅雨のような本降りになる雨の間の何とも表現できない柔らかさをもった雨が穀雨です。この雨が降ると、農業では田植えの準備をするようになります。

七十二候は次のようになっています。

初候:葭始生(あしはじめてしょうず)水辺の葭が芽吹き始め、山の植物、野の植物が緑一色に輝き始める頃。葭は、最終的にすだれや屋根などに形を変え、人々の生活を手助けしてくれます。

次候:霜止出苗(しもやんでなえいづる)暖かくなり、霜も降らなくなり、苗がすくすくと育つ頃。田植えの準備が始まり、活気にあふれている農家の様子が連想できる言葉です。

末候:牡丹華(ぼたんはなさく)牡丹が開花し始める頃。美しく、存在感があり堂々としている牡丹は、中国では代表花として牡丹となっていて、多くのの逸話や美術に登場します。

この時期には牡丹の他にも藤が咲き、チューリップが盛んに咲きます。また蓬(よもぎ)がでてきて、柔らかい蓬で餅を作ったりします。蓬餅や草餅と呼んでいます。食べ物としては筍(たけのこ)、新牛蒡、鯵、こごみ、ヤリイカ、が知られています。筍は早掘りが3月頃から出てくるので、今はもっと早いイメージがありますが、本来はこの頃が旬です。

穀雨を題とした俳句も名句があります。

苗床に うす日さしつつ 穀雨かな(西山泊雲)
田植え前の苗床に雨の晴れ間の薄日が差している情景です。美しい日本の原風景です。

風眠り 穀雨の音か 夕早し(小倉緑村)
風が眠るという表現がおもしろいです。風が止んで雨の音がしているのが聞こえてきて、そうこうしているうちに早くも夕方がやってきました。

琴屋来て 琴鳴らし見る 穀雨かな(長谷川かな女)
今では琴を買う人は少なくなりましたが、家に琴屋が来て、琴を鳴らしている音を聞きながら、雨の音を聞いている、という風情です。

傘立てて 穀雨の雫 地に膨れ(峰尾北兎)
傘を縦にしたら、雫が垂れて、地面を濡らして、膨らんだ様子ですが、細かな描写を楽しむ日本の文化です。

雲すぐに 明るくなりし 穀雨かな(岬雪夫)
穀雨の時期はすぐに雨も止み日が差すことが多いことを表現しています。雨と日の変わり具合が日本の季節の特徴です。

睡(ねむ)るとは 不覚穀雨の 散髪屋(高澤良一)
散髪中に寝てしまうことがありますが、それを不覚にも寝てしまった、という気持ちと、この時期の心地よい気温を重ねています。

本読むは 微酔(ほろよい)のごとく 穀雨かな(鳥居おさむ)
本を読むのはまるでほろ酔いのような心地がする穀雨という心情です。そんな読書がうらやましいですね。

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