投資と投機


投資

一般人に誤解ないし混同されることが多い語彙が投資と投機です。実際にきちんと区別している人は少ないと思われます。投資とは文字通り資本にお金を出すことで、将来成長しそうな会社を探してその会社の株を長い目で持ち続けることです。会社は資本金として株式を発行していますが、その株式を公開市場に出して、売買を可能にすることが「上場」です。投資の本来の意味からすると、会社設立の時の資本金を出すことが投資です。しかし関係者以外の人がそれに投資することはまずできないので、株式市場に出された株を買うことで資本に参加し株主になることが投資となります。いわば会社経営責任の一端を担うことが本来の意味です。会社が株式を上場しないかぎり、株価は資本金として登記された金額のままですから利益はでません。しかし一旦上場されて売買の対象となると、持ち株を売りに出せば、最初に投資した額より高く売れることがあり、それが利益となります。米国では創業者が資本投下(投資)して会社を作り、会社の業績が上がってきたら、株式を上場し、持ち株を全部売って会社ごと新しい株主に売って利益を得る、という手法が普及しています。今、大金持ちといわれている人はほぼその手法で金持ちになった人です。こういう創業と売却を繰り返して資産を増やしていく人もいます。日本でも最近になって、そういうタイプの金持ちも出始めましたが、まだまだ少なく、金持ちといわれる人は世襲財産による資産家が多いのが日本の特徴で、それが日米の金持ちの違いといえます。

一方、投機は短期的な値上がりのタイミングを狙って資金を投じることで、会社の経営そのものには関心はなく、株価の上下にのみ注力する行為です。投資は中長期の視点で収益を期待することを目指しているのに対し、投機は短期的な価格変動に注目して、短期的な利鞘の獲得を目指している点が投資と投機の違いです。今、政府や証券会社などが推進している「投資」というのは実際には投機ですが、投機のイメージが悪いせいか、投資という語にすり替えています。実際、株式の購入の際に株価以外に関心が薄く、業績は株価との関係で気にする程度であって、その業績の社会的意義とか、商品価値に関心はほぼないのが実情です。話題の投資信託は信託会社に金を預けて、投機による利益を上げることになります。預けている側も預金金利との比較だけで、どこの会社に投機しているのか、などには関心がないと思われます。外国の投資家の中には日本の会社に投資して経営権を握り、経営しようとするケースもありますが、その場合も上記のように経営によりさらに株価を上げて売ろうという意図をもっていることが普通です。投資と投機の違いはモラルの違いではなく、価値観の違いです。会社とは何かという思想が異なるわけです。投機は違法でもなく不道徳でもありません。投資をinvestment、投機をspeculationと英語ではいいます。Speculationには推測、憶測、熟考、瞑想などの意味があり、よく考えることを意味する語です。Vestは服のことでinvestは地位ふさわしい服を着させるにつけるが本義です。

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