LInstok Press 発行の手話学雑誌(英文)一部欠落巻あり
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手話の雑学91新着!!
(1)統語的役割の可視化 日本語は語順や助詞の世界ですが、手話は主語を置いた位置、目的語を置いた位置、動詞の方向性が統語そのものになります。これは統語が抽象化する以前の“直感的な構造化”を強く思わせます。 (2)再帰的構造を空間で表す 「A の考えている B の話を C が聞いた」のような、入れ子構造は手話では空間の視点移動で表現できます。身体がスッと“A側の視点”になったかと思うと、すぐに“Bの・・・
手話の雑学90新着!!
言語の進化過程を考えると ・象徴化 → 記号が世界から独立する・身体性 → 記号を運ぶ媒体が発達する・文法 → 記号どうしが無限に組み合わさる これが人間特有の言語能力の発火点と考えられています。手話の「空間文法」は、人間の言語がどのように生まれたかを考えるうえで、とても面白く、手話は“化石のような現代言語”です。化石と言うと古びたものに聞こえますが、実際は進化の痕跡を保持しつつ高度に洗練されたシ・・・
手話の雑学89新着!!
2.身体性の言語論 言語は頭の中の霧のような構造ではなく、身体的な動き・知覚・行為の延長線上にあるという考え方です。とくに手話学はこの仮説の最前線に立っています。興味深いのは、手話と音声言語が別々に進化したのではなく、「身体的ジェスチャーから音声と言語的手話が分岐した」という視点です。人間は姿勢・視線・手の形・リズムなどを非常に細かく制御できます。これが「表象のプラットフォーム」として働いたのです・・・
手話の雑学88新着!!
では、人間と動物の間で「手話コミュニケーション」は成立するか、という昔からの課題があります。SF映画などでは、当然のように描かれていますが、現実は簡単には結論できません。現実の話として、訓練された犬や馬などは手話風のシグナル体系を習得できます。犬の訓練では、聴覚障害者のためのデフドッグが、人間の手話単語に近いシグナルを理解して動作する例があります。人間が言語指導する側に立ち、犬が記号を学ぶという構・・・
手話の雑学87新着!!
ハンドサインの文化と今後はどうなっていくでしょうか。想像もむずかしいのですが、人間社会と同じく、動物訓練の世界にも「方言」があります。犬訓練のハンドサインは国や団体ごとに微妙に違い、馬術でも乗り手ごとの癖がそのまま「言語」になります。これは、ハンドサインが人間言語のように標準化した文法を持たず、身体がそのまま記号の個体差になる領域だからでしょう。最近では、聾者のドッグトレーナーが増え、手話の一部語・・・
手話の雑学86新着!!
聴覚を使える犬や馬にもハンドサインが使われる理由があり、デフドッグだけではありません。警察犬、競技犬、馬術、牧羊犬でもハンドサインは広く使われます。理由は単純で、音声よりノイズに強く、距離に強く、方向の影響を受けにくいためです。競技犬訓練(オビディエンス)では、声のコマンド(verbal cue)よりハンドサイン(visual cue)のほうが優先度が高いとされるほど。犬は同時に出された場合、視覚・・・
手話の雑学85新着!!
Deaf Dogs Rock の哲学として、この団体の中心には、ひとつのシンプルな信念があります。“Deaf dogs are not broken. They are simply different.”(デフドッグは壊れてなんかいない。ただ、世界の読み方が違うだけだ。) 音声を失っても、視線、触覚、空気の揺れ、光のパターンを使って世界を読む能力は健全そのもの。犬は音に依存しないので、聴覚障害は・・・
手話の雑学84新着!!
デフ・ドッグズ・ロックという団体の成り立ち、活動内容、哲学、そしてデフドッグの文化的な意味までをご紹介します。創設者は Chris(クリス)夫妻。きっかけは、聴覚障害をもつ子犬「ニトロ(Nitro)」を家族に迎えたことでした。ニトロを育てるなかで、聴覚障害を持つ犬は「問題犬」と誤解されやすく、保護施設でも譲渡が進みにくく、殺処分のリスクが高いのです。しかし実際には、視覚サインを使った学習能力が高く・・・
手話の雑学83新着!!
デフドッグのトレーニングの要点は、科学的な動物行動学の知見と、デフドッグの特性を合わせると、次のようなポイントが浮かびます。 ・注意喚起は「振動・光・触覚」:床を軽く踏む、手を振る、懐中電灯で短く光を出す、肩をやさしくタップするなど。・サインは一貫性が命:犬にとって「形」は連続的な動きとして認識されます。同じ速度・向きで示すことで語彙が安定します。・強化(ご褒美)はタイミング勝負:聞こえない分、合・・・
手話の雑学82新着!!
デフドッグ(Deaf Dog)は、聴覚に障害のある犬の総称で、人間と同じく、先天的なケースと後天的なケースが含まれます。静かな世界に住む彼らは、人間が音声で世界を切り取るのとは別の仕方で周囲を感じ取っていると考えられます。視線、動き、空気の振動、そして飼い主の表情と体の使い方など、いわば視覚重心のコミュニケーション圏で暮らしている存在です。また嗅覚に優れているので、人間ではほとんどコミュニケーショ・・・
手話の雑学81新着!!
手話が文法をもっていて、語を生産できるのに対して、ハンドサインや野球のサインは文法を生まないので、次々に語を生産していくことはできません。手話では動詞が名詞化したり、空間を文法機能として使ったりできますが、OKサインに派生語はありません。派生という語形変化ができるのも手話の特徴です。いい換えれば、文化的ハンドサインは単語だけの辞書であり、手話は「辞書+文法書+発話能力」をもつ体系だと考えるとわかり・・・
手話の雑学80新着!!
なぜ手はこんなに表現力があるのでしょうか。手は脳のセンサー地図(ホムンクルス)というのをごぞんじでしょうか。たぶんどこかで見たこともあると思いますので、検索してみてください。手はホムンクルスで異常に大きな面積を占めるほど高精度の制御が可能です。さらに、視覚は空間情報を処理するのが得意なので「形」「方向」「動き」を瞬間的に理解できます。手の細やかな運動と、視覚の処理能力が噛み合うことで、ハンドサイン・・・
手話の雑学79新着!!
聴覚と視覚はまったく別の媒体なのに、形態音韻が意味の調整装置として働く点では本質的に同じというのが重要なポイントです。 4. 語彙クラス:擬態語と描写的構文(depictive constructions)の相似 音象徴の擬態語は「状態」を描写する語彙です。例は「しんと、わくわく、のそのそ、きらきら」などがあります。手話にも描写的構文(depictive constructions)があります。動・・・
手話の雑学78新着!!
ここで手話と音声言語の構成素を改めて考えます。 1. 最小単位レベル:音素 vs. 手話の構成素(手形・位置・動作) 音象徴が働く最小の場所は音素です。/p/ が軽い破裂、/g/ が重い摩擦”、/i/ が小ささ、/a/ が広がりなど、音の物理的特徴が何らかの意味連想と結びついています。手話の形態素にも象徴性の偏りがあり、手形の「開く・閉じる」、動きの「しなる・跳ねる」、位置の「上・下・身体への近さ・・・
手話の雑学77新着!!
もうひとつ重要なポイントなのが、視覚と聴覚というモーダルな違いを「言語」として束ねる脳の柔軟性の問題です。脳科学でいちばん驚かれるのは、聴覚を失った人が手話を使うと、視覚情報であっても言語野が活性化するという事実です。言語は入力モード(視覚・聴覚)に依存していないこともあり、むしろ、象徴性で意味がうまく立ち上がるなら、脳はそのルートを積極的に使う、ということです。これは、オノマトペが音象徴で意味を・・・
手話の雑学76新着!!
視覚と聴覚というチャンネルの違いは、脳のどこで処理されるかという「局在」と無縁ではありません。むしろ、手話の図像性と音象徴がそれぞれ独特の力をもつ理由のひとつに、脳の処理ルートの違いが関わっています。ただし、脳は単純な“分業制”ではなく、とても柔軟に仕事を回しているので、ここはその点を考慮して観察します。まず視覚系情報処理です。 ・視覚系:後頭葉+側頭・頭頂の空間処理ネットワーク 視覚情報は後頭葉・・・
手話の雑学75新着!!
5. 習得(acquisition)への影響 子どもは手話でも音声語でも、象徴性の高い表現から早く習得します。手話では、飲む・叩く・落ちるなど、図像性の高い語彙が初期に出やすいという傾向が見られます。音声では、ドンドン、ブーブー、チクッなど、音象徴語が初語に混じりやすい傾向があります。象徴性は、抽象概念の前に“感覚の足場”を提供するため、言語発達のブースターとして働きます。 6. 抽象概念への橋渡・・・
手話の雑学74新着!!
ここでさらに深い議論になりますが、図像性(iconicity)と音象徴(sound symbolism)の違いを明確にしておきましょう。「記号のかたち」と「意味」との距離が近い現象ですが、それぞれ別のメディアに根ざしながら、共通する働きと、まったく異なる力学の両方を持っています。 1. メディアの違い:視覚 vs. 聴覚 図像性は視覚の領域に根ざします。手の形、動き、身体の配置、空間の使い方など、・・・
手話の雑学73新着!!
2. 感覚や質感の表現に強いオノマトペは音がしない出来事まで音のように「状態」を描きます。手話も同じで、動きの速さ・強さ・反復性、手の形の“締まり”や“ふくらみ”で質感を描くことができます。たとえば 手話には、手の動きの速さ・テンションを変えることで「イライラ」「のろのろ」などのニュアンスを表す方法があります。音声言語の擬態語と酷似した、感覚の“表現装置”として機能しています。 3. 形式が自由に・・・
手話の雑学72新着!!
では、どうして日本語はオノマトペが多いのか、という疑問が出てきます。研究者たちはさまざまな説明を試みていますが、決定版はありません。作業仮説としてよく挙げられるのは次のような観点です。 ・音節構造が比較的単純であるため、新語を作りやすい。・擬音語・擬態語が古代から文芸に活発に使われてきたため、表現のストックが厚い。・語彙の種類として社会的に許容されており、子ども語から大人語までシームレスに利用され・・・

