「なぜ」を問うてみよう 1
欧米人、とくにアメリカ人と会話していると、頻繁にWhy?を訊かれます。ある芸人のネタにWhy Japanese people …というのがありますが、なぜこういう質問が出るかというと、質問者は自分が納得するための説明を求めているからです。日本人が「なぜ」を問う場合、理由とか動機を訊くことが多いと思います。ある意味、単純な疑問であって、それで納得するためではないと思います。結果的に納得することはあっても、それが目的で質問することはあまりないような気がします。
なぜ、と似たような語法にどうして、があります。なぜ、と、どうして、はどうちがうのでしょうか。なぜ、は単純に理由や原因を聞きたい気持ちが強い表現で、どうして、は驚きや不満など感情的な部分が強い表現、というのが一般的な解説です。どうして、はどうする、どうした、どうしたい、など動詞としての変化があるのに対し、なぜ、はこういう変化がありません。また、なぜ、は理性的、どうして、は感情的、という解説もあります。
英語でもwhyと似たニュアンスのhow comeという表現があります。この2つでは使用頻度はwhyが圧倒的に多く、カジュアルな場面でしかhow comeは使わないので、日本人としてはあまり使わないのが無難です。意味としては、how comeの方は、否定的であったり、予想外の驚きというニュアンスがあり、感情的な意味が強くなります。
日本語でも英語でも、なぜ、という理由を相手に聞く場合、原因や理由などを冷静に知り、納得したい場合と、自分の予想外、期待通りでなくて、不満を相手にぶつけるために聞く場合とがある、ということです。この使い分けを意識していない人が多いのですが、使い方を分ける訓練をすると、冷静な状態か、感情的になっているかが意識できます。そして感情的になっている場合は、質問を何度も繰り返すことになります。なぜ、という質問の先は、会話の相手であることもあり、自分自身であることもあり、第3者に一般的に質問する場合があります。相手に訊く場合は、相手の行動の理由や動機を知りたい場合がほとんどですが、自分に訊く場合、つまり自問自答の場合は、反省であったり、確認であったり、理性的な判断を求めていることになります。そして第3者に問う場合は哲学的な命題であることがほとんどです。
例文で考えるとわかりやすいかもしれません。「ここに来たのはなぜですか?」「なぜこんなことしているのだろう」「なぜ人は嘘をつくのだろう」のように相手と意味が変わります。しかし、実際の場面では、自問自答することはかなり少なく、哲学的ななぜを考えることはさらに少ないのが普通です。むしろ、最近では、どうして、を訊く人が増えてきていないでしょうか。自分の期待通りでないことが、あまりに多いからかもしれません。政治、経済、会社、仕事、日常生活などの不満が溜まっていると、つい目の前の人にあたってしまい、その時のことばが、どうして、です。なんで、というさらに俗語的な表現だと、感情的側面が強くなります。
こうした似たような表現でニュアンスの異なる表現がどのように使われているか、周囲を観察してみてください。
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