語呂合わせ 4 縁起



語呂合わせは同じ言語現象でも、洒落、ダジャレ、地口などいろいろな呼び名があります。

駄洒落(だじゃれ)はレベルの低い洒落ということで、同じ語呂合わせにも違いがあるわけです。駄という接辞は駄菓子、駄賃、駄々、無駄など価値の低いことを示します。同じ言葉でも、それだけ評価も違うし、意味が広いということです。こういう現象を語彙分化というのですが、たとえば英語ならrice1語でも、日本語は米、稲、籾、飯、ライスと別の語彙に分化し、その派生として、ご飯、玄米などもあります。これは日本文化ではいかに米が重要かということを示しています。同じことが雨についてもいえます。反対に英語のcow, ox, calf, beef, veal, milkなどが日本語では牛の派生形になります。つまり同じ物に対して、分類の必要は文化によって異なるわけです。

日本文化において、語呂合わせが重要視されていることは、いわゆる縁起に表れていることからもわかります。正月料理は、正に縁起そのもので、昆布(喜ぶ)、田作り、鯛(めでたい)、鰹(勝つ)、タコ(多幸)、豆(マメに働ける)など語呂合わせが、かなりを占めます。逆の縁起、つまり悪い意味をもつ場合は言い換えをします。スルメは縁起が悪いので、アタリメ、擦り鉢をアタリバチ、「髭をそる」は江戸弁では「髭をする」となるので、「髭をあたる」となります。植物でも南天は「難を転ずる」ということで、縁起のよい木とされています。ダイダイは「代々」につながるとされ喜ばれる庭木です。ジンチョウゲは中国名を「瑞香」と言い、「瑞」は吉兆を意味する言葉で、その名前から縁起のいい木とされています。マンサクはその名前が豊年満作(実り豊かでたくさん収穫できること)を連想させることから縁起のいい木として好まれます。センリョウ、マンリョウはそのまま千両、万両というお金を連想させるということから、富を招き寄せる、金運が上がるなどと言われ、縁起のいい木として好まれます。少し金額が減りますが、ヤブコウジは別名十両と呼ばれ、縁起のいい木として好まれ庭植えやお正月の飾りに好まれます。クロガネモチは秋から冬の間、真赤な実を付ける常緑高木です。その名前が「苦労のない金持ち」を連想させるとして、キンカンは黄色の果実が黄金を連想させると言われ好まれます。また数字の4や9が死や苦につながることから、避けるなどの習慣もあります。8が縁起の良い数字とされるのは、漢字の八が末広がり、つまりこれから運が開けていくという意味から来ています。同じ理屈で扇子を末広と呼ぶのは形から来ています。結婚式では、切るは縁起が悪いので、ケーキ入刀のように言い換えます。こうなると語呂から外れてしまいますが、日本文化はそれほど言葉の縁起に拘るのは、いわゆる言霊、言葉に魂がある、それが現実に影響すると考えるからといえます。この思想は人名にも影響し良い名前と良い漢字がありますが、近年はキラキラネームに見るように、文化が変化してきています。それでも語呂や音の響きなどを重視して命名することが続いています。語呂と縁起が結びついているように、音は大事なものです。

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