秋の社日



社日(しゃにち)は、雑節の一つで、産土神(生まれた土地の守護神)を祀る日です。春と秋にあり、春のものを春社(しゅんしゃ、はるしゃ)、秋のものを秋社(しゅうしゃ、あきしゃ)ともいいます。「社」とは土地の守護神、土の神を意味です。春分または秋分に最も近い戊(つちのえ)の日が社日となるのは「つち」との関りと考えられます。この日は産土神(うぶすなかみ)に参拝し、春には五穀の種を供えて豊作を祈願し、秋にはその年の収獲に感謝する、という行事です。また、春の社日に酒を呑むと耳が良くなるという風習があり、これを治聾酒(じろうしゅ)といいます。そこで治聾酒は春の季語になっています。秋はなぜだめなのかは不明です。産土神は、その土地で産まれた人々の一生を見守り、特に土地神として五穀豊穣の「食べる運」、つまり家計を守護して下さる、ともされてきました。農作祈願だったかつての社日では、産土神はその集落の「土地神」して、産土神を祀る日であるため、土いじり(農作業)を行わない忌み日でもありました。その昔は、春は種・秋は収穫した農作物と、その集落に馴染みのある農作物が供えられてきましたが、現代では、ぼたもち、新米、酒、のようなお供え物が一般的です。反対に禁忌もあり、肉と魚はタブーです。神道では干し魚や干しアワビなどを神様にお供えすることがありますが、社日は農業との関りなので、牧畜や漁業の方は別の神様にお願いすることになっています。土地神と氏神が時々混同されることがありますが、氏神は氏族つまり血縁関係によるものであるのに対し、土地神はその土地に関わる神様です。つまりある氏族が引っ越せば、氏神様は変わりませんが、引っ越し先の土地神様にご挨拶をして、お祀りすることになります。「社日詣」という習慣がある地域もあり、社日に近隣の七社の神社を巡拝します。正月の七福神巡りと似ているかもしれませんが、特定の神様ではなく、近所の土地神様にご挨拶をする感覚です。鳥居のある神社を七社を巡拝します。社日には食べる運を付ける、暮らしを守護していただくとして、農業を営む人々に限らず、家計の安心を得るとして参る人もいます。お願いごととして、五穀豊穣(家計の安泰)、痛風の予防、ボケ封じというご利益に増えている所もあります。お供えも、焼き餅、治聾酒(春のみ)、塩水と塩(砂) という習慣が残っている地域もあります。「お潮井(おしおい)」とは、砂浜の砂による厄祓いです。社日に海に行き、砂浜の砂「真砂(まさご)」を持ち帰り、家や自身に撒いて厄を祓う風習です。福岡県の箱崎浜から竹の籠「でぼ」に入れて砂浜の砂「真砂」を持ち帰って、そのまま玄関に供えておき、出掛ける時などに身にふることで、災いから守ってくれると信じている地域もあります。このお潮井は田畑に撒いても用いられてきました。現代では海に行けないとして、塩水と塩を撒く家も見受けられるそうです。こうした地域では、古老からの言い伝えで社日の行事が伝承されていますが、だんだん過疎地になっていき、伝承も困難になってきているのが実情なので、社日が死語になるのも、そう遠くはないかもしれません。

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