Yule(ユール)
クリスマスに比べ、ユールというのはほとんど知られていません。クリスマスというのは英語のChristmasの借用語で、Christは「キリスト」、masは「祭」の意味です。一般にイエスの降誕の日とされていますが、これは「伝説」であって、そもそもイエスの生誕は年月日に諸説があります。西洋歴はキリスト教暦ですから、西暦ゼロ年がイエスの誕生年のはずです。紀元前BCはBefore Christですし、ADはAnno Dominiつまり「主の歳」ですから、この歳に生まれたことになっているのですが、BC4年とか諸説あります。そして12月25日生まれということは聖書に書いてありません。実は復活祭も日付が特定されていません。つまり歴史的事実よりは、みんながそう信じている「真実」が重要視されているわけです。
クリスマスがこの時期になったのは、キリスト以前にすでにあった冬至の行事が基盤にあったといわれています。冬至は日々誰もが感じる自然現象であり、この日から太陽が復活するので、新年の始まりと考えるようになるのは自然なことです。とくに冬の長い北欧においては、夏至と冬至が重要な日で、夏至祭は今でも盛んに行われています。冬至祭も古来からあったもので、それがYuleです。ユールはゲルマン民族共通の祝祭で、英語でもYuletideといい、いわゆるクリスマス時期を示す表現になっています。日本でクリスマスキャロルはYuletide carolsともいいます。現在でも、北欧諸国ではクリスマスとはいわずYuleということが多く、これはバイキングの時代からの伝統になっています。冬至は太陽が再び力強い生命を持つ日で、それを新年とし、北欧神話の神々、それも豊穣と平和の神ヴァン神族ではなく、オーディンにビールや猪や豚などを捧げたとされています。これは穀物霊に関わるためだそうで、特に猪はフレイ神の象徴であり、神聖ないけにえとされています。ヴァン、オーディン、フレイなどの北欧神は日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、オーディンが水曜日、フレイが金曜日の語源であることを知ると、興味が湧くかもしれません。現在でも北欧やドイツのクリスマス料理は、豚肉がメインです。豚肉の天ぷら、日本でいる「トンプラ」と、北欧では貴重品である米のミルク粥が定番料理になっています。日本人からすると、「なぜ?」と思うのと同様に、日本で「チキンと苺ケーキ」というと「なぜ?」と聞かれてしまいます。サンタクロースもニッセという小人が定番で、その親分ともいえるお爺さんがいます。それがユール・トムテです。ニッセはニルスやニコラスと同語源で、こうした北欧伝説が入り交じって、現在のサンタクロース(セントニクラウス)になったと考えられています。あの防寒服やトナカイなど北欧の習慣であることが明らかです。クリスマスツリーの樅の木や雪も北欧のものです。これらの北欧伝説はキリスト教以前の文化ですが、それらが欧州で、そして米国で融合したものが、日本に伝わって、さらに日本型に進化したのが現在の日本のクリスマスです。その意味では「本場のクリスマス」にコンプレックスを抱く必要はなく、日本型を推進するも悪くないといえます。
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