小正月


コラム挿絵:小豆粥のイラスト

正月の後の15日前後の3が日が小正月です。本来は旧暦の行事なのですが、現在は新暦に移して行われるようになった行事の1つです。小正月に対して、正月を大正月ということもあります。なぜ15日なのか、というのは旧暦の考え方が関係しています。旧暦では新月の朔日が1日で、満月が15日です。今年は1月29日が新月ですから、この日が旧正月です。そして、旧小正月は2月12日が満月で、旧暦小正月になります。明治5年の暦の改革は、旧暦の意味や伝統を全く無視した改定でしたから、無理がありました。機械的に暦を移した結果、行事が自動的に移動し、本来の意味がわからなくなってしまいました。今でも、旧暦が生活に密着している農業関係者が多い地域では、旧正月も旧小正月も旧暦で行われますが、多くの地域では、機械的に新暦に合わせていますし、マスコミは何も考えずに報道しますから、意義も薄れ、小正月そのものがだんだん失われていっています。行事はその意味があってこそのものですから、意味が失われるとだんだん行われなくなっていくのは当然ですし、反対に行われなくなると、意味も失われていくという悪循環になります。伝統というのは自然に保たれるものではなく、意識的に伝承しないといけないものです。小正月の行事には、どんど焼き、左義長などの他に、餅花という小枝に小さな餅を付けた飾りを飾ることもあります。繭玉と呼ばれる飾りは、餅を小さく丸めて紅で染めたものと白いものを枝につけるので、梅の花が咲いたような感じになり、一足早い春の訪れのような華やいだ気分になれます。蚕の養殖が盛んだった関東地方で、養蚕業の繁栄を祈願して繭玉と呼ぶようになったといわれています。枝に餅だけでなく、いろいろな飾りをつけた小正月飾りもあります。また食べ物としては、鏡開きで開いた餅でぜんざいを作ったり、小豆で粥を作る小豆粥があります。赤い小豆は魔除けでもあり福を呼ぶという縁起があります。また寒い時期なので、甘酒が振る舞われることもあります。おもしろいのは、小正月に果樹の豊作を祈願する「成木責め」という儀礼があります。これは、果樹をおどして豊産を約束させるという行事です。全国に広く分布しているそうで、柿や梅などの果樹に対して行われています。2人一組になって果樹に向かい、一人が「成るか成らぬか、成らねば切るぞ」と唱えながら鎌や斧、ナタなどで樹皮に少し傷をつけ、もう一人が果樹になったつもりで「成り申す、成り申す」などと答えると、傷のところに小正月の小豆粥が少し塗られるというのが一般的な形式だそうです。女正月という呼び名もあり、昔は台所を預かる女性は大掃除やおせち料理作りなどに大忙しでした。そのため、元日から続いた様々な行事がひと段落した小正月の頃は女性がゆっくり休むことができるので「女正月」というのだそうです。忙しかった正月が終わり、やっと女性が正月を感じられる頃ということでしょう。しかし現代でそういうことを言えばセクハラといわれてしまいそうです。伝統も時代とともに変わっていくものもたくさんあります。

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