手話の雑学40


手話で話す女性のイラスト

一方で日本の英語学習はどうかというと、学校で1年に100時間程度、9年間で1000時間程度、高校や大学を入れても、1,500時間程度でしょう。しかも「日本英語」中心です。そもそも「役に立つ英語」をまったく学んでいないのですから、できるはずがないのです。そして英語ができる人は「日本英語のできる人」です。

ここでも「英語」として一括りにして考えることが間違いだといえます。英語にも種類があり、日本英語は英語の言語変種です。しかし「日本英語力」を否定する必要はありません。外国人にとっては日本語より、日本英語の方がわかるからです。これは英語圏以外の人の英語に接してみると、すぐにわかります。お互いに外国語として英語を学んだ同士なので、速度もゆっくりで、現地人の「くずれた英語」を使いません。ある意味、書きことばをそのまま話すため、誤解が少ないのです。一方、英語圏の人々は当然のことですが、話しことばで話し、しかもそれは時代とともに変化する速度が速いのです。これは「文字変化は遅い」「文字変化は話しことばを追いかけて変化する」という法則によります。そのため、明治時代に起きた「言文一致運動」のように、文字変化が遅れた分を時々修正する必要が出てきます。辞書作成はそういう苦労の連続です。「現代用語辞典」が出版され、国語辞典がたびたび改訂されるのは、言語変化があるからです。文字変化よりさらに遅いのが文法変化です。文法も長い間には一部が変化していきますが、それには相当長い年月がかかります。日本語は歴史が長いため、古代語と中世語と現代語では文法が変わってきています。それは英語でも、どの言語にも同じ現象があります。文献などの記録があるかないか、で研究成果は異なります。まとめると、話しことば、書きことば、文法という順にゆっくりと変化していくのが言語変化の総体です。これはどの言語でも共通であり、手話も例外ではありません。

問題はこの変化過程を現代から推測するためには「文献」のような客観的な証拠が必要です。話しことばは揮発情報なので、文字という不揮発情報がないと推測が困難です。そのため文字を持たない言語の古語研究は相当にむずかしい作業になります。その意味で、ロゼッタ・ストーンは大きな意味をもつわけです。石に刻まれたものは、紙に書かれた文献よりも残りやすいので、考古学の化石と同様の価値をもちます。現代、圧倒的に増えたデジタルデータは、現状は不揮発情報ですが、メディアがたびたび変更になり、そのためにデバイスが変わって、利用できなくなるので、完全不揮発情報とはいいがたい側面があります。現実に、デジタルデータをわざわざプリントアウトして置くこともあります。現在では、文献化の意味を再考すべき時期にきていると思われます。近年はアーカイブという用語が頻繁に見られます。アーカイブarchiveとは「組織や個人の活動の中で作成される文書であり、単に収集・保存するのではなく、ある体系に基づいて編纂し、目的があって保存された文書の集合体である 。」(wikipedia)となっています。

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