手話研究の星5 マキンタイア(Marina McIntire)② 


手話で話す女性のイラスト

そうした興味をもっていた一人がマリナ・マキンタイアでした。彼女は幼児の手話習得についての修士論文を出した直後で、当時は珍しいテーマであったため、私も興味を持ち講義にでることにしました。予想通り、学生は日米の手話の違いに興味を持っていましたが、それだけでなく、日本文化にも興味を持っていました。それはLAという特別な地域性もありました。日系人が多く住み、リトル・トーキョーという日本人街があり、日本からの観光客や留学生も多く、太平洋を挟んで反対側という地理的条件もありました。一番近しい外国文化はメキシコですが、その次が日本でした。また戦時中の交戦経験のある軍人や戦後に駐留した経験のある人も多く、それらを本にした誤報も混じった情報が溢れていました。スシなどの食べ物、カラテやボンサイなどの趣味の人もいました。それらは日本人から見ると本物ではないのですが、それは日本の洋食と同じで、それぞれの文化によって加工されたものですから、当然です。LAにも日本人職人の本格的寿司屋もありましたが、一般的に高級かつ独特の文化があるため、日本でいう高級フレンチのように敷居が高いものでした。それでそうした「マナー」を知りたいという人もたくさんいました。

寿司店といえば、印象に残っているのは、カウンターの隅に正装した黒人の客がマティニを飲んでいる姿です。食前酒にマティティを飲むのは欧米の高級レストランでは普通ですが、寿司屋で見かけたことはなかったので、少し衝撃でした。反対にまずビールというのは、彼らからすると違和感があります。食前酒にビールは入っていません。もう1つ、ある女性から、pink gingerをどうやって頼んだらいいのか、聞かれました。彼女は生姜が大好きで、とくに甘酸っぱいガリが大好きなのです。ガリがピンクなのは日本では珍しい部類ですが、欧米では酢の関係もあって、普通にあります。日本ではガリは原則無料だと伝えると「日本に行きたい」と言いだしたほどです。欧米では有料なことが多いですが、注文はできます。彼女のリクエストは、「生ものは苦手なので、サシミでないスシとガリを一杯食べたい」でした。そこで一緒に行き、イナリやカッパ、干瓢巻、太巻などを注文し、お望み通りガリをたっぷり注文してあげました。彼女はスシにそういう種類があることも知らなかったので、私をスシの神様のように思ったようです。その話を聞いていた板前は、サービス精神もあって、イカ素麺やアナゴ一本握りなどを出してきました。当時はスシ用語はまだ英語になっていなかったので、IkaやAnagoではなくsquid, conger eelという英語的には気味の悪い訳語でしたから、余計食べる気がしなかったようです。名前からイメージは食べ物の場合、とくに重要です。日本でもカタカナで書いてある欧米料理は日本語に訳すと食欲が減ることは間違いないです。ソーセージを腸詰にするとどうでしょうか。

マリナの授業はとてもやさしい雰囲気の楽しい授業でした。彼女に家に招かれて日本の手話学についての議論をしたことが、私の手話研究の範囲を拡げたことも確かです。

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