手話研究の星5 マキンタイア(Marina McIntire)③

マリナの授業中の討論の中で、一人、日本にbuffaloがいるか?と質問してきた学生がいました。バッファローはアメリカの牛で、野牛であるバイソンbisonと並ぶアメリカ独自の牛という認識を持っていた私は日本にはいないと答えました。しかし彼は「いるはずだ、来週証拠写真を持ってくる」というので、次の週まで結論は持ち越しとなりました。
翌週、彼が持ってきた写真は沖縄の水牛の写真でした。これに対する答えはしばし考え込みました。というのは、私が持っていたバッファローのイメージは、西部劇などで観たバッファローの大群が平原を疾走するものや、バッファローを狩猟して食料にしているものでした。実際、そういう乱獲でバッファローが激減したのも事実です。しかし、それはバッファローのこともありますが、バイソンという大きな野牛とのイメージの混合で、バッファローというのは正確には水牛のことです。角の形がまったく違います。そして沖縄には水牛が今もいます。彼がいう「日本にバッファローがいる」というのはまったく間違いだとはいえないわけです。しかし、日本全土に水牛がいるわけではなく、特別な例だということを説明することにしました。これは日本人がアメリカにカウボーイがいる、というイメージと同じことで、カウボーイがいるのはごく一部の地域です。このエピソードは、文化理解の重要な点を示しています。間違いではないが、過剰に拡大したイメージであったり、過小に評価したイメージであることが普通で、正しく理解しているケースは案外少ない、ということです。手話の世界でいえば、世間は聾者ならみんな手話で会話しているというイメージです。あるいは補聴器をつければ完全に聞こえるというものです。似たようなものに、関西人ならいつもおもしろいことが言える、と思っている東京人とか、東京の人はいつもクールだと思っている関西人など、異文化に対するイメージは現実とは異なっていることが多く、そのために迷惑している人も多いのが現実です。私も滞米中、カラテを見せてくれ、とか、茶道を教えてくれ、とかよくいわれました。そして、Zenについて解説してくれ、というのもあり、wabi-sabiについて講演してくれ、というのもありました。そのため、帰国後、勉強することになり、自分自身の教養を深めるきっかけになりました。
Zenは鈴木大拙が英語で出版した本が広がっていることが原因で日本仏教の代名詞となっています。ワビサビも禅との関係の深い茶の湯の本から紹介されたものです。こうした背景を知らずに、日本での解釈を元に解説しても、ほぼ理解されません。そのため、日本文化や仏教などを紹介した英語の本を読むことになりました。おかげで欧米の日本理解がどのようなものかを知ることができ、彼らとの討論ができるようになりました。同じことは日本にもあり、日本語で紹介された外国に関する書籍は、強調、拡大、矮小化が日本人によって行われている、と考える方がよいです。それくらい異文化理解というのは難しいものなのです。本から知識を得ることは重要ですが、できるだけ幅広く読み、偏らないよう注意が必要です。
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