芒種(ぼうしゅ)



6月6日は二十四節気の芒種です。その次の節気が夏至なのでいよいよ夏本番という感じになります。芒(のぎ)というのは稲や麦などの穂の先の棘(とげ)のようなものを指します。種はタネです。芒種とはノギのある植物の種を蒔く、という意味が本来ですが、実際には種まきは既に終わっており、この時期だと苗になって田植えを待つ段階になっています。それで昔は芒種といえば田植えをする時期と解釈されていたようです。そのため全国の神社では豊作祈願の行事があります。大阪の住吉神社では御田植神事があり、香取神宮の御田植祭、伊勢の伊雑宮(いざわのみや)の磯部の御神田が「日本三大御田植祭」だそうです。皇居でも天皇陛下による御田植がありますが、時期はもう少し早いようです。この御田植は昔からの伝統ではなく昭和天皇がお始めになったのが引き継がれています。田植の行事には白または紺の装束に赤いたすきをかけ菅笠で歌いながら女性が田植えをします。それが早乙女(さおとめ)です。早乙女といえば今では苗字の方が知られていますが、早乙女は田の神様に奉仕する若い女性という意味なので、神社の巫女さんと同じ考えです。女性にだけ労働をさせているわけではないので誤解のないようにしてください。しかし今では田植え機が主流なので行事も廃れて、稲作が聖なる仕事であるとは考えられなくなりました。昔は米が単なる食べ物ではなく、神への捧げものであり、邪気を払うものなので、米から作った酒や餅も神事に用いられます。ご飯を食べる時も「いただきます」と言って神に感謝するのです。戦後は神道廃止によって、米を食べる時の感謝は農民の労働への感謝ということになってしまい趣旨が変わってしまいました。
芒種はこれから稲が生長するという意味なので、発達や発展という縁起がいい言葉とされています。これから習い事を始めるとか、6歳の子供にこの日から修行をさせるとよい、などと言われていました。
年によってずれがありますが、そろそろ西日本では梅雨入りになります。沖縄では既に梅雨入りで、沖縄では小満から芒種が梅雨の時期に当たるため、梅雨のことを沖縄方言で「小満芒種(すーまんぼーすー)」と言うそうです。沖縄方言は古い日本の季節感が言葉や習慣としてきちんと残しているのも不思議です。
芒種は10日毎に候に分けられ(七十二候)ます。初候は螳螂生(とうろう しょうず) です。 螳螂とはカマキリのことです。次候は腐草為蛍(ふそう ほたると なる)つまり 腐った草が蒸れ蛍になる、ということでそろそろ蛍が出てきます。鵙始鳴(もず はじめて なく) ともいいます。末候は梅子黄(うめのみ き なり)つまり 梅の実が黄ばんで熟します。梅干しには熟した梅の実を使います。青い梅も梅酒にしたり、梅味噌を作ったりしますので、この時期に収穫します。反舌無声(はんぜつ こえ なし) というのもあり、反舌鳥が鳴かなくなるとされています。反舌鳥はツグミのことらしいです。文献では百舌(もず)との混同も見られます。
歴史では元弘3年(1333)5月8日、新田義貞は上野国生品明神で鎌倉幕府打倒の兵を挙げました。これが鎌倉の戦いの始まりです。この戦いで鎌倉幕府は滅亡します。この時、新田義貞は稲村が岬で黄金の刀を海に投げ入れ、そこに出現した干潟を渡って鎌倉を攻め落としたという伝説があります。手話の<新しい>は新田の新から来ており、刀を投げ入れる仕草が元であったという起源はもう忘れられているようです。

田植え

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