赤字と黒字
会計では赤字と黒字は重要です。語源は手書きで数字を記入していた時代、マイナスを赤いインクで書いて注目することから、赤字というようになった比喩表現です。現代なら何色の文字でもよいのですが、昔は墨も黒と赤しかなかったので、その習慣が続いたのですが、今でも修正や点数付けには赤色が用いられます。赤と黒は古今東西、対比色として利用されてきました。トランプカードの模様、ルーレット、小説の題、男女の例えなど、比喩が多く使われています。
黒字を英語ではfavorable赤字をunfavorable といい、意味は好ましい、好ましくないということです。赤字会計が好ましくないことは当然ですね。会計報告書では赤字で表示することもありますが、印刷の便宜上、数字の先頭に△や▲をつけることで表示する習慣です。所得や利益では-記号をつける場合もあります。
損益計算書はProfit & Loss Statementといい、文字通り利益と損失を書いた書類ということで、損失が赤字となります。利益は黒字のままなので、暗に「黒字が当たり前」ということを述べていることになります。ちなみに収支計算書はBalance Statementですが、statementの代わりにsheetということもあり、日本ではこちらの方が使われることが多いようです。収支計算でも利益が計上され、損失を赤字で記します。こちらが純利益なので、会社の財務状況を概観する時はここが問題視されます。PLとBSの違いは実は重要なのですが、会計に詳しくない人は違いを理解していませんから、ほぼPL的な思考をしています。いわゆる小遣帳や家計簿は収入と支出を書いて残高を確認するので、収支計算といえばそうなのですが、残高を利益と考えている人はまずないと思います。ここに一般人の会計意識と会計人の会計意識の乖離があると思えるのです。
小遣帳や家計簿では残高ゼロはあっても赤字による損失という感覚はなく、前借などの負債という感覚になると思います小遣帳は会計でいうと現金出納です。この出納という用語も古いですね。役所以外では使わないでしょう。現金取引だけならこれで十分な管理ですが、現代はクレジットという名の信用取引、サブスクという名の月賦販売も多くなっています。実は信用取引は戦前まで普通にあり、掛けとかツケと呼ばれていました。それが借金のほとんどでした。現代社会で、クレジットやサブスクがツケなのだということをどれほど意識しているか疑問です。これは預金という制度のせいかもしれません。昔はツケ払いも現金取引で払えなくなると夜逃げという自己破産だったのです。給与も昔は現金支給であったのが口座振込になって取引実感がないのが原因かもしれません。預金残高は現金残高と同じ資産なので、その意味では日本人のほとんどは「資産家」なのです。そうなると資産と負債の収支が赤字が黒字かにもっと注意しないといけないのです。
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