秋の社日
秋分に最も近い戊(つちのえ)の日を「秋の社日」といいます。 春の社日は「春社」、秋の社日は「秋社」とも呼ばれ、土地の神様をまつる日とされています。 春の社日の頃は種まきの時期にあたり、秋の社日の頃は収穫の時期にあたります。
社というのはその土地の神様、守護神、産土神(うぶすなかみ)のことをさします。元々社日を祝う習慣はやはり古代中国にあり、土という意味がある戊の日に豊作祈願をするものでした。この風習が日本に伝えられると、元からあった土地の神様を信仰する日本の風土に合い、重要な農耕儀礼として全国に広まったようです。そして社日は土の神をまつるので、この日は農作業など、土をいじることを忌む風習が各地にあるそうです。また、土地の神様というよりも農耕の神様と考える地域もあり、信州の「お社日様」は春は神迎え、秋は神送りとして餅をついて祝うそうです。博多では古くから「お潮井」と呼ばれる箱崎浜の真砂を、「てぼ」という竹かごに入れて持ち帰り、玄関先に下げておく風習があるそうです。「災いを除き福を招くもの」として、身を清めるお祓いに用いられたり、建物や土地のお祓いや田畑の虫よけなどにもまいてお清めとするそうです。今では廃れつつある文化のようです。社日は、その土地ごとの神様を祝うので行事の形は様々です。日本が農業よりも工業や金融などの産業に力点を置くようになり、農業人口の減少に伴い、こうした農業と関りの深い習慣もだんだん忘れ去られていくのは寂しい気もします。
今や農業は貿易産業となっており、肥料やエネルギーも輸入、産物も輸出に力を入れるようになり、いわゆる加工貿易の産業に変化しました。近年は農作業者も労働者扱いになり、外国人労働者を頼るようになってきており、土地の神様どころか、土地への執着も薄れてきています。水耕栽培のように土を使わない農法も開発され、収穫時期をコントロールして、「より高く売れる」ことを目的とした農業が当たり前となっています。「農業者だって食べていかなければならない」とよく言われますが、その食べ物を作っているのが農業なのですから、何か思想が違ってきているようです。食べていくことよりも「金儲け」が先にあり、そのために機械を使い、化石燃料を使っていて、本来脱炭素産業だったのが炭素消費産業になっているのは矛盾ですね。
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