主観と客観
昨日の「変化と選択」に関係して、その判断基準は人によることがわかりました。その人の判断基準が判断する人にある場合が主観的とされています。そうでない場合を客観的といいますが、日本では主観的は正しくなく客観的が正しい、というような議論が目立ちます。これは主観と客観を絶対視していることから起こる誤解です。
主観というのはその人が考えていること、客観はその人以外の人が考えていること、なので、どちらも人が考えていることに変わりはありません。時々誤認されるのが、争いの当事者がお互いに主張している時、当事者以外の人の視点を客観的ということがあります。そしてそれが公平であると考える人が多いです。しかしこれはあくまでも客観「的」であって、その第三者の主観であることに変わりはありません。
抽象的な概念なのでわかりにくいのですが、これを英語で考えるともう少しはっきりします。主観=subjectは客観=objectです。英語のsubjectは意味が広く、主題,問題,題目 、題材、学科、科目、主語、主体,主観,自我 、実体など、日本語にすると実に多岐に渡ります。専門分野ごとに訳語があるためで、日本語で考えていると概念がつかみにくい用語です。英語のobjectはsubjectの対語で、こちらも物体、対象、目的、目標、目的語などの訳語があります。つまりこの用語は欧米の言語であれば共有できる概念で、このままでも問題はないのですが、日本語のような別言語にすると翻訳に困る概念の1つの例です。日本語の中にも外国語に翻訳しにくい概念がいくつもあります。有名なのがホンネとタテマエです。一応訳語はありますが、例文を見るとニュアンスと用法に微妙な違和感があります。こういう用語は文化とも関係がありますが、その国民性とか、思想と結びついています。主と客というのは、日本語なら主人とお客という関係を暗示していますが、西洋語のsubject, objectはそういう関係ではなく、人とモノの関係に近い意味があります。それも、たんなる人とモノというのではなく、主が自分、客が自分以外というニュアンスがあって、言い方を換えると自己中心的な観点ともいえます。日本語で考えると自他の区別に似ています。日本語で客というと、尊重し大切にする、というニュアンスがありますが、西洋語では逆の視点です。そのせいか客観というと重要というニュアンスが日本では強くなっています。
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