日本語教育と国語教育
日本語教育は日本で仕事をしようとする人に対して行うことが最も多いと思われがちです。しかし実際には、日本国内における日本語教育実施機関・施設等で学ぶ日本語学習者数は、2015年(平成27年)11月現在、19万人なのに対し、世界全体の日本語学習者数は同年現在で約365万人となっていて、約20倍です。順位としては1位中華人民共和国953,283人、2位インドネシア745,125人、3位大韓民国556,237人、4位オーストラリア357,348人、5位中華民国220,045人、6位タイ173,817人、7位アメリカ合衆国170,998人、8位ベトナム 64,863人、9位フィリピン50,038人、10位マレーシア33,224人、全世界合計 3,651,715 人(Wikipedia)となっています。ほぼ10年前の統計なので、現在は大きく変わっている可能性が高いですが、これは人口にもよりますが、おおよそ、その国が日本に対して抱いている関心の高さを表しているともいえます。日本は恐らく英語に関心が強く、関心の高さはアメリカなど英語圏だと思われます。しかしその英語圏からの関心は意外に少なくて、「片思い」のような状態です。逆に日本人が関心を持つ外国語としてインドネシア語やタイ語は少ないのではないでしょうか。
一般に日本語教育は外国人に日本語を教えることを想定し、日本人に対する日本語教育は国語教育としています。国語と日本語のように、同じ言語を区別する国は稀有でしょう。そもそも日本人は国語と日本語の違いを認識しているでしょうか。何となく国語は学校で習う教科で、日本語は普段使う言葉のような区別をしていると思います。その感覚はかなり正しいのですが、正確には国語は日本人が学習する言葉で、日本語は外国人が学習する言葉、のような違いが一般的です。
国語教育は文字学習が多く、ひらかな、カタカナ、漢字の学習に多くの時間が費やされます。世界的には珍しいことで、ほとんどの国がアルファベットを使っているため、文字学習の時間は少ないのは道理ですが、綴り学習も含めると、どこの国でも国語教育は文字学習です。しかし実際の海外の日本語教育では、文字学習、とくに漢字学習に四苦八苦のようです。そして、ひらかなとカタカナの違いがわかりにくい、と学習者に不評です。最近では日本語に英文字が入ってくる外来語は逆に簡単のようです。大きな言語の国、英語圏、フランス語圏などでは、外国での言語教育に熱心です。それは植民地政策の一環だからといえます。日本では英語教育が義務化されていますが、フランス語やドイツ語や中国語を教える専門学院が設立されています。植民地を支配する宗主国にとって、植民地の住民が宗主国の言語が理解できることは重要です。植民地支配は宗教と経済、政治の支配が焦点ですが、そのためには言語支配が最重要ということです。日本は植民地がなくなってしまい、こうした感覚も失ってしまいましたが、今も植民地をもっている国の感覚は続いています。JICAの資料によれば、派遣者の約40%が人的資源ですが、日本語教育はわずか4%にすぎません。日本は政策として言語支配を想定していないことがわかります。
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