コミュニティカレッジ


職業訓練

アメリカ独特の制度にコミュニティカレッジというのがあります。カナダにもあるようですが、アメリカの制度を模倣したものです。コミュニティというのは日本では誤解されている語の1つですが、ここでは地域コミュニティの意味です。コミュニティカレッジは郡や市などが一般市民向けに開設している公立の短大で、入学基準は緩く、費用も安いので、誰でも通える学校です。若い学生は少なく、学生の多くは社会人か一旦休職している人で、授業内容もさまざまです。多くの学校では、再就職のための職業訓練に重点が置かれており、高校を出て社会に出たものの、所得が低い職業が多いので、キャリアアップをして、より所得の職業へと転職するための訓練を行っています。内容的には日本の専門学校に近いのですが、公費で補助されている点がまったく異なります。

日本の場合は、高校を出て、専門学校に通い、手に職をつけて、就職するというパターンが一般的ですが、アメリカの場合は、職業に就いた後に転職するための訓練を受ける学校である、という点が大きく違います。また日本の専門学校は授業料も比較的高く、私立がほとんどで、学生はかなりの負担を強いられます。日本では国立の高等専門学校として、工業、商船、電波があり、公立や私立はごく少数です。授業料は比較的安いのですが、高等学校と連結していて、入学試験はかなり難度が高いのです。そのため一般社会人の入学はまずありません。そのため高校進学段階での選択肢の1つとなっています。

こうした学校制度の背景には、学校を出たら就職し、そこで一生働く、という終身雇用が前提であった頃の社会に対応していたということがあります。そのため、現在、社会ではやたら転職を進めるようなCMが流れて、アメリカ型の転職社会を宣伝する一方で、政府はリスキリングという、自費による、あるいは会社が負担する転職のための職業訓練を推進するだけで、教育制度を改革しようという政策はまったく出てきません。雇用に関する社会制度を終身雇用型から転職型に転換しようとするならば、当然、職業訓練機関の改訂が必然なのですが、そこには手をつけない、という矛盾した政策を取り続けています。そのため転職によるキャリアアップには、退職リスクがあり、所得のない状態での職業訓練を強いられるため、なかなか進まないのも当然で、結果的に各企業の技術革新や生産力が向上しないという結果を生んできています。政治家は高校の無償化や大学補助ばかりを唱えますが、実は問題はそこではなく、社会人の再教育を企業あるいは個人に任せにしないで、国家として再教育をどうするか、という政策が必要です。

欧米の場合、軍による職業訓練もありますが、日本では軍に対する誤解が広がっていて、平時の軍の訓練が何をしているか、については国民の関心は薄いです。まして外国の軍の内容には関心がないのです。高度な最先端技術は軍が開発し、そこから民間に下ろしていく、というのは技術者なら誰でも知っていることですが、日本は民間頼りなので、世界水準から遅れるのは当然でしょう。社会人の再教育は大切なことです。

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