成人教育


生涯学習

成人教育adult educationについて、日本はかなり遅れています。アダルトというとアダルトビデオに見られるように、性的な意味が強くなってきているせいか、アダルト・エデュケーションという表現自体、日本ではほとんどみません。あれほどカタカタ好きの官僚にしては珍しい現象です。成人教育は生涯学習という表現に変えられています。文部科学省が定めている生涯学習とは「大人になっても学習を通じて自己の人格を磨き、豊かな人生を送るために、(中略)人々が生涯に行うあらゆる学習を指します。」「具体的には、学校教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられます。(文部科学省「生涯学習の意義と推進体制の整備」)しかしそのための予算について報道されることはまずありません。

子供関連については異常なくらい議論があり報道されるのに比べて成人の教育にはマスコミも随分冷淡です。経済協力開発機構(OECD)が2012年に実施した「国際成人力調査(PIAAC 2012)」では、各国の成人に「現在、何らかの学位や卒業資格の取得のために学習しているか」を尋ねています。30歳以上の成人の割合を見ると、1位はフィンランドの8.27%、次いでノルウェー、イギリスなど欧州の国々が上位をしめており、多くが5~8%となっています。一方日本は1.60%と他国と比較しても低い水準となっているのです。これだけの差が生まれてしまう理由は、ランキングの上位国では教育有給休暇や学費の無償化など、成人が「学び直し」できる制度が整っていることなどが関与していると言われています。

(出典:経済協力開発機構(OECD)「国際成人力調査(PIAAC 2012)」)なにかというと、いつも北欧を引き合いに出すのですが、この話は政治家からも出たことがありません。じつは「再就職に当たっての学び直し」も生涯学習のきっかけの一つですが、それは転職という労働市場の労働力不足の対策としてリスキリングという名前で個人や企業に負担を押し付けているだけです。例えば女性の就職希望は、正規雇用・非正規雇用を問わず、事務的職業が多いと言われていますが、その反面、事務的職業は慢性的に求職超過の程度が大きい職業とも言えます。そのため、労働市場を踏まえ、社会に求められている多様な職種や業種について知り、選択肢を広げる学びが求められるのです。子どもの出産・育児などから社会復帰する人にとっては重要なテーマと言えます。それは子育てや働き方改革という形に変えられてしまい、成人教育という視点が抜けています。

近年は、フリーランスやクラウドソーシングを利用した働き方など、雇用関係によらない働き方も増えています。しかし、実際に起業を考える人も、行動には至ってない場合が多くあるのです。

このような、様々な学びの機会を生涯通じて学習していく必要性が、今後求められています。(内閣府男女共同参画局「令和元年版男女共同参画白書『多様な選択を可能にする学びの充実』」)このように担当省庁がバラバラで、予算もバラバラなのが日本の現状です。

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