やまとことば⑮ 気3
「気」をケと読むとこちらも古来から、多くの語があります。「気(け)」から始まる語もありますが、どちらかというと「気(け)」で終わる語の方が多いようです。意味としては辞典によれば①そのものがもつ要素や傾向。また、それが感じられる状態・気配。②そのものから発して、その存在を感じとらせるもの。気体状のもの。におい。味など。③それを感じられる心の状態。気分。心地。④気候。天気。⑤病気。⑥多く「気(け)が付く形での語。と分類されていますが、具体例が想い浮かぶでしょうか。意味はこのように抽象的な意味ばかりです。
念のため例を示しておきます。①「火の気」「血の気」など、②味気(あじけ)、③恐ろし気、④雨気(あまけ)、⑤脚気(かっけ)、⑥産気(さんけ)などがあります。どちらかというと古い語が多いようです。ケの付く語には仮病(けびょう)、物の怪(もののけ)など別の漢字が充てられている語も多いので、音だけから識別するのはむずかしいです。ケの漢字には毛、家、卦、化、袈など数多くあるので、漢字の知識が不可欠です。会話から日本語を覚えた外国人や、国語の勉強不足の人には正しい感じを連想することさえむずかしいものです。こういう漢字を覚えるには、読書が一番効果的学習です。日本人は同音語の場合、頭の中で漢字を連想しつつ識別していることも多いのですが、ケの場合は、ケを含む語を一語として認識している可能性があります。それは、聞いてわかっても漢字がなかなか書けないことからもわかります。たとえば「はっけよい」は八卦から来ていることを知らない人が多いですし、「坊主憎けりゃケサまで憎い」という慣用句はまとめて記憶していて、ケサがあの衣装だということはわかっても、袈裟という漢字が書ける人は少ないと思います。ケを気と書く場合でも、「ひのけがない」から火の気を連想する人は少ないかもしれませんが、「火気厳禁」という標語はよく見るので、「火気(かき)」なら連想しやすいかもしれません。この時、同じ「気」の漢字をケと読んだり、キと読んだりすることにも、それほど抵抗感がないのも日本人の特徴かもしれません。
漢字に複数の読み方があることは日本人には何でもないことなのです。しかし日本語学習者にとってはなかなかハードルが高いです。欧米の人にとって、日本語は学習困難な言語の1つで、文字が多い、助詞の使い方が面倒ということの他に漢字の読みが複数あり、意味も異なることが理由になっています。反面、音はややこしい子音が少ないので、憶えやすく、それで近年はアニメなどから日本語の音を覚えた若い外国人が流暢な日本語を話す人が多くなりました。音だけでも普通の会話なら問題なくできますから、それでいいわけです。反対に日本人は文字から外国語を学習することが多いので、音だけの外国語学習は苦手の人が多く、それが日本英語が広がる原因でもあります。子供のうちは文字学習もほとんどしないので、音から入るスムーズな外国語学習ができます。幼児英語教室などはそれを利用しているのです。ただ大人の英語で文字無しということはないため、子供のようにはいきません。
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