先住民の日


アイヌ文化

8月9日は「世界先住民の日」です。「1982年(昭和57年)のこの日、スイスのジュネーヴにおいて、先住民の人権の促進と保護のために小委員会における「国連先住民作業部会」の第1回会合が開催された。世界には推定3億7000万人の先住民がおり、90ヵ国に住んでいる。世界中に多くの先住民がいる一方で、彼らは最も不利な立場にある。先住民は人権・環境・開発・教育・健康・経済・社会開発などの分野において問題に直面している。国際社会は、先住民の権利を保護し、独自の文化と生活様式を維持するために特別な措置が必要であると認識している。」としています( https://zatsuneta.com/archives/108096.html )。
それは間違いないのですが、日本語の先住民のイメージとは微妙なニュアンスの違いがあります。英語ではIndigenousといいますが、直訳すると「土着」です。土着民ではなぜいけなかったのかが不明ですが、原義はin=中、gen=生む、ous=形容詞語尾が合成されたものですから、直訳的な解釈では「その土地で生まれた」ということで、原産とも訳されます。先住民はnativeとも表現されるので、昔日本で「アメリカインディアン」は現在、Native Americansと呼ばれ、日本ではアメリカ先住民と訳しています。つまり日本語の先住民は2種類の英語に使い分けられていますが、意味は同じです。日本語でネイティブという時はnative speakers母語話者の意味に限定していますから、混乱が起きやすいです。土着民というと土人のような感じがして差別的だとして排除されたのかもしれませんが、言葉狩りをして言い換えても差別意識がなくなるわけではなく、実際、先住民と言い換えても、差別意識は変わらず、不利な立場が続いているので、こういう特別な日が制定されているわけです。日本語の先住民は「先に住んでいる人」というニュアンスなので、土着あるいは原住とは限りません。世界の多くの国では、長い歴史の中で住民がしばしば変わったという歴史があります。遺跡にしか残っていない先住民もいます。しかし、先住民の日が指定しているのは、現在も残っている少数民族のことです。消滅した先住民は対象外です。日本で考えるなら、最初に日本列島に住んだのはどういう民族なのかは確定した説はありませんが、今のところ、土器と言う証拠があるので、縄文人だとされています。今の日本人が縄文人の子孫かどうかは議論があり、そして弥生人という外来の、つまり移民があったということになっています。もし弥生人の支配により、縄文人が激減して、奴隷化され、差別された、ということならば、その子孫は上記の「先住民」に該当しますが、DNA研究では「純粋な縄文人の子孫」はいないのではないか、という説が有力です。当然、弥生人との混血や他の渡来人との混血があります。この混血という社会現象が問題で、純粋な先住民の特定は困難なのが実情です。現在の日本ではアイヌ民族は国連のいう先住民に該当するとされていますが、アイヌ以前に縄文人が北海道に住んでいたことは確かであり、アイヌ人が北海道の原住民かどうかの判定は歴史的には微妙です。明治以降の本土人の入植からすれば先住ですから、その説が採用されているようです。

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