宗教と階級
キリスト教では「神の下の平等」ということになっています。しかし実際には、聖職者にも階級があります。カトリックではそれが顕著で、一番上に法王がいて、枢機卿や大司教などの高位の聖職者がいて、選挙によって選ぶシステムになっています。大司教の下に司教の下に司祭、助祭がいて、さらに副助祭、侍祭(じさい)、祓魔師(ふつまし)、続師、守門(しゅもん)とかなり複雑な階級制度になっています。それに対抗したプロテスタントは牧師のみです。イスラム教では、建前として神と人との間に仲介役を入れる、あるいは信徒間に階級差を設けることを嫌う傾向があり、ウラマーは聖職者ではない、とか、イスラムには聖職者はいない、と主張されることが多いようです。しかし実際にはイランのように国家指導者が聖職者であり、1979年に制定されたイラン・イスラーム共和国憲法によって、国の元首である最高指導者の地位は、宗教法学者に賦与されています。憲法第4条では、すべての法律および規制がイスラムの基準に基づくものでなければならないという原則が定められています。憲法では一応、三権分立が規定され、立法権は一院制の国民議会、行政権は大統領にありますが、実質的には最高指導者が三権を掌握しており、大統領の地位はその下になります。日本の仏教は、宗派によって、階級(僧階)は異なりますが、代表的なものとしては、次のようなものがあります。大僧正(だいそうじょう)権大僧正(ごんのだいそうじょう)中僧正・僧正(ちゅうそうじょう・そうじょう)権中僧正(ごんのちゅうそうじょう)少僧正(しょうそうじょう)権少僧正(ごんのしょうそうじょう)大僧都(だいそうづ)権大僧都(ごんの だいそうづ)中僧都・僧都(ちゅうそうづ・そうづ)権中僧都(ごんのちゅうそうづ)少僧都(しょうそうづ)権少僧都(ごんのしょうそうづ)大律師(だいりっし)中律師・律師(ちゅうりっし・りっし)権律師(ごんのりっし)となっています。平安時代の貴族の位階に似ていますが、それもそのはず、僧階(そうかい)は、律令制に由来する僧侶の官職階級制度だった僧官が原形だからです。僧には僧位という位階もあり、これは3つの僧正(大僧正、僧正、権僧正)が法印大和尚位(ほういんだいかしょうい)、4僧都が法眼和尚位(ほうげんかじょうい)、3律師が法橋上人位(ほっきょうしょうにんい)となっています。僧階は僧侶に対して与えられるものに対し、僧位は、僧以外の仏師や絵仏師、連歌師などにも与えられるようになっていきました。近世になると絵師が任命される例が増え、武士の入道、儒者、医師などにも及んだということです。法印大和尚位は略して法印、法眼和尚位は略して法眼、法橋上人位は略して法橋といいますが、これを自分の名にする人も出てきました。法印大五郎という侠客(きょうかく)は清水の次郎長の配下になりましたが、元は山伏であったそうです。山伏はあの装束から僧と思っていない人が多いと思いますが、本当は修験道の修行僧です。時々誤認されるのですが、源義経は九郎判官(ほうがん)なので、法眼(ほうげん)ではありません。念のため。
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