文化の語源



 「文化」という言葉は、中国の古典文学に由来します。最も古い使用例は『易経』に見られ、「文治教化」を意味する言葉として使われました。「文」は礼儀や学問、「化」は人々を教え導くことを指します。これが転じて、広く人間の精神的・物質的な活動全般を指すようになりました。日本において「文化」という言葉が広まったのは、奈良時代から平安時代にかけてのことです。中国からの影響を受け、仏教や儒教の教えとともに「文化」という概念が伝わりました。特に、平安時代には貴族社会において文学や芸術が発展し、「文化」という言葉が日常的に使われるようになりました。確かに今日でも、ファンの多い「源氏物語」や「枕草子」など女流文学が花盛りでした。和歌集も多く発行され、芸術黄金期ともいえます。近代になると、文化の再定義が行われ、明治時代になると、西洋の思想や技術が日本に流入し、「文化」という言葉の意味も変化しました。福沢諭吉などの思想家が「文明開化」という言葉を用い、西洋の進んだ技術や思想を取り入れることが「文化」として捉えられるようになりました。この時期に「文化」という言葉は、単なる伝統や習慣だけでなく、進歩や発展を意味するものとして再定義されました。つまり古代の「文化」と近代の「文化」は意味が異なることを知っておかねばなりません。戦後になると、「文化」にはさらに意味が加わり、「文化住宅」「文化焼き」「文化堂」のように、何か新しくてよさそうなイメージがでてくるようになりました。どちらも今はほとんどの使われなくなりましたが、「文化」が英語のcultureの訳語として定着すると、「文化教室」が「カルチャーセンター」と名称が変わっていきました。カルチャーの方が新しいニュアンスを持っているようです。また文化人類学という研究分野がありますが、有名なミードは、文化を「学習された行動の様式」と定義し、新たな概念が付加されて、特に性文化について研究は、男女の性格は生得的ではなく、社会的に形成されたものであると説き、ジェンダー論にも大きな影響を与えました。また人間の寿命が延長されるほど一夫一婦制が一生持続する可能性は少なくなるという考えのもと、結婚に過度な期待を抱かないことと予備的結婚を推奨し、自ら実践しました。また、現代になると、グローバル化による文化の多様性が問題になってきます。グローバル化の進展により、世界の異なる文化が相互に影響し合うようになりました。現在はインターネットや交通手段の発達により、世界中の文化が瞬時に共有される時代となっています。このため、文化の多様性が一層重要視されるようになりました。一方で、急速な変化の中で伝統文化の保存と継承が課題となっています。ユネスコの無形文化遺産保護条約など、国際的な取り組みが進められており、各国が自国の文化を守り、次世代に伝える努力を続けています。「文化」という言葉は、時代や地域によってその意味が変化し続けています。現代においては多様性と保存の重要性が強調されています。文化の起源とその変遷を考察することは、現代社会における文化の意義を理解する上で非常に重要です。

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