焚火の炎


コラム挿絵:キャンプで焚火する女性のイラスト

最近はちょっとした焚火ブームのようです。焚火や囲炉裏の火を見ると、癒される人も多いと思いますから、ストレスの多い現代に、こうしたブームが起こるのも理解できます。炎のゆらぎが癒し効果があるそうです。一人キャンプというのも流行っているそうで、例外なく山中で焚火をしています。こうした流れは必ずしも悪いことではないのですが、実は山火事の原因になることが多いそうです。火を焚いている間はそれなりに注意するでしょうが、終わった後の始末が不十分のことが多いからです。これはバーべキューでも同じです。ガスボンベを持ち込んでのバーベキューであれば、火を消せば、それで終わりですが、薪を燃やしたり、炭を使う場合は要注意です。後始末をしっかりしないと、消したつもりの残りが再度燃え出すこともよくあります。炭を起こした経験がある人なら知っていますが、消し炭はすぐ火がつきます。昔は、火鉢の炭は消し炭で起こしたあとで、新しい炭を接ぐことが常識でした。とくに薪から火を起こした時、薪はだんだん炭になっていき、最後に灰になりますが、それまでにかなりの時間がかかります。キャンプの焚火など、灰になるまで待っていることは少ないと思います。焚火の後、炭が残っているのをよく見かけます。そこに枯葉などが落ちれば、すぐに火がつきます。それがさらに周囲の枯葉に広がり、枝に移り、火事になっていくわけです。昔はタバコのポイ捨てが問題になっていましたが、喫煙者が減った現在では、焚火が問題になっています。こうした山火事の問題だけでなく、焚火は当然、二酸化炭素が出ますが、問題視している人をみかけません。まして山火事になれば、膨大な量の一酸化炭素、二酸化炭素が放出されます。もちろん、それを抑止する手立てはありませんが、科学的には議論になってよいはずです。何年か前、火を焚くとダイオキシンが出ると大騒ぎになり、ゴミ処理問題や焚火まで批判の的になったことがあります。ダイオキシンは主としてプラスチックを燃焼させた時に出る猛毒ですが、焚火も薪だけとは限らずプラスチック容器などを燃せば当然発生します。そうした注意は今、ほとんどなされていません。もう過去の話題だったということかもしれません。個人の焚火などから出る炭素化合物はほんのわずかかもしれませんが、まとまれば、かなりの量になるはずです。牛の排出物からのメタンを問題にする環境派活動家もいますが、人類だけでなく、動物はすべて二酸化炭素を排出するので、地球的に見れば膨大な量です。しかし、それらは森の植物や海の海中植物が吸収し、酸素を排出する、という循環によってバランスが保たれてきました。つまり自然循環であるかぎりは問題なかったわけです。問題になってきたのは産業革命以後、エネルギーの大量消費が行われるようになってからということです。そして電力がその象徴です。しかし、その電力で動かすことは脱炭素になる、という論理は科学的に矛盾しています。再エネのために山を切り開いて太陽光発電も同じような論理矛盾といえます。焚火の火のゆらぎを見ながら、無心で考えてみる問題でしょう。

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