手話の雑学35

「文字が音声より証拠能力がある」という偏見の根拠は、客観性ということなのでしょうが、録音技術が発達し現代では、「話したこと」に真実性を求める傾向が強くなってきています。文字は他人でも捏造できるものですが、話したことは、本人であることを証明しやすいからです。同様に、動画像が増えてきた現在、動画の「証拠能力」が広く認められていますから、「手話の証拠能力」が認められるようになるのも、そう遠くないと予想されます。現在、それがまだ達成していない理由は、司法が「手話がわからない」ことにあり、そこに「言語の壁」があります。もし、手話が「正しく翻訳」できることができれば、その問題の解決の道があります。
そのためには、翻訳技術が進歩する必要があります。現状、手話を日本語に翻訳するという考えは未発達で、主として「手話通訳」に重点が置かれています。手話通訳に意味がないということではありません。会話の現場では、通訳が必要で、「即時」にメッセージを伝達することが重要な場面はあります。しかし、話しことばが文字化されて、翻訳されることは、客観性が高まるという面と、記録により「時間的制約がなくなる」ことが重要です。文字化はその機能がある手段です。専門的な用語になりますが、情報には「揮発性情報」と「不揮発性情報」があります。「揮発」というのはなじみのない用語ですが、たとえば、ガソリンのように、容器のふたをあけると、空気中に拡散してしまうのが「揮発」です。油も「揮発油」は危険性が高いので取り扱いに注意しなければならないようになっています。油だけでなく、アルコールなども揮発性が高いので、危険物として、交通機関への持ち込みが禁止されています。しかし、揮発性そのものが危険ということではなく、ガソリンやアルコールは爆発するから危険ということにすぎません。情報の場合、揮発性に危険性があるわけではありません。ただ揮発性情報は、「その場かぎり」なので、誤解が生じやすいという弱点があります。
話しことばは揮発性情報、書きことばは不揮発性情報と分類できます。情報伝達メディアとして、ラジオやテレビは揮発情報、新聞や書籍は不揮発情報といえます。もっとも、ラジオやテレビも今や録音・録画により、不揮発化が可能になっています。インターネットの世界は現状、揮発情報と不揮発情報が混在していますが、SNSはほぼ不揮発化しています。ただ、利用者が明確にそれを区別しているとはいいがたい状況のようです。よく「炎上」という現象が見られますが、それは発信者が情報の不揮発性をあまり認識しておらず、「反射的に」投稿したものが、読者の反応を強く呼び起こした現象といえます。不揮発情報の典型である書籍の場合、出版前に念入りな推敲をするのが普通で、読者のさまざまな反応を期待し、予想もしています。しかし、SNSの場合、文字を使用していても、不揮発性を意識していない場合も多く、「気軽に」発信してしまうことも多いようです。とくに動画配信の場合は、その傾向が強くなります。そこに揮発情報の「取り扱い」が重要です。
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