手話の雑学41

手話には文字がありません。そのため「文献」が長く存在しませんでした。映画が発明されてから、わずかに記録がありますが、録画にかかるコストや撮影条件が厳しく、わざわざ手話を記録することは稀有だったのです。写真による記録も一部にありますが、静止画なので、動きがよくわかりません。古典的には言語による記述もありました。日本でも明治時代、いくつかの「手話辞典」が作成されており、それは聾教育用でした。これは今日的視点から見ると、聾者手話ではなく、聾児と聴者の教師との合作による「日本語対応手話」で、聾者の日常会話が記録されたものではありませんでした。実際、「見出し語」はすべて日本語で、手話の内容が文章で記述されています。昭和になって、写真や絵で示されるタイプがでてくるようになりましたが、とくに急増したのが、手話通訳者養成制度が始まり、聴者に手話を教える必要ができて以降です。見出し語は日本語で、手話をイラストで示し、説明を加えるという「手話辞典」は今も出版され、使われ続けています。ビデオ録画が可能になって、少し状況が変わりました。テレビでも手話ニュースや手話講座が開かれるようになり、手話を動画で見ることができるようになったのは、写真やイラストより訴求力があり、わかりやすくなりました。動画による手話辞典も一部では出てきていますが、製造コストの問題もあり、高価になるのと、録画を見るデバイスの問題もあって、まだ発展途上です。近年ではインターネットを利用した手話語彙検索辞書もあります。動画になると問題になるのが「肖像権」の問題です。それをクリアする方法の1つとして、アバターを使うことが考えられ、現状では人間をモデルとして提示するタイプと、人間の動きをモーション・キャプチャという技術を使ってアバターによる提示をする方法が混在しています。後者はコストが非常にかかるため、現状ではNHKだけのようです。NHKはモーション・キャプチャのデータを非公開にしているため、それを利用して新たなアバターによる手話辞書などを作ることも、分析することもできません。独占技術になっていますが、できれば将来の科学進歩ために公開してほしいものです。民間ではQRコードやボーカロイドのように公開されることで応用範囲が広くなり普及した技術もあります。
手話について、さまざまな手話辞典が発行されているので、語彙学習は容易になりました。しかし翻訳のためには、文法知識が不可欠です。肝心の手話文法研究があまり進んでいません。その理由はいろいろありますが、まず「文法とは何か」を考える必要があります。語彙は目に見えるものですから、辞書などによって、起点言語の語彙を学習することは容易です。しかし文法は「しくみ」つまり「構造」であって、目に見えません。自動車に例えるなら、ハンドルやアクセルやブレーキは操作が簡単で、実際にその操作技術を学習します。しかし、それらの部品がどのようなしくみで動いているか、を知る人は少なく、自動車学校でもほとんど教えません。
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