庚申



3月8日は庚申(かのえさる)の日です。60日に1回ある庚申の日は庚申(こうしん)の行事が行われる地域が今でもあります。今年の初庚申は1月7日であったため、人日(じんじつ)の節句の七草粥と重なったため、実質的に本日が初庚申となります。
庚申信仰はいわゆる民間信仰で、元は老子が説いた道教の三尸説(さんしせつ)に密教や修験道などの日本の宗教が絡み合って作られてきたものです。庚申講や庚申待をしているお寺や神社は今でもありますし、地域に庚申塚や庚申堂が多く残っています。普段見過ごしていて何かの祠と思っている方が多いと思います。一度近所の石仏とか小さな祠やお堂などを散歩のついでに探してみてはいかがでしょうか。
庚申の本尊は青面金剛という独自のご神体でビシュヌ神の転化という説もあります。青面金剛は手が4本あって、憤怒の表情をされた青い身体です。手には三叉の鉾、棒、法輪、羂索を持って足元には邪鬼を踏みつけているのが基本形で剣、弓、矢、錫杖のこともあります。額には三つ目があります。一見不動明王と間違えるかもしれません。青面金剛ではなく猿田彦神を祀る所もありますが、これは申(さる)が猿と同じなのでそこからきたようです。また猿そのものが飾られている所もあります。最近では「さるぼぼ」という猿の人形を吊るしたものも売れているそうです。形が一見猿ではなく三日月のような形のものもあり、京都では「くくり猿」と呼ばれています。さるぼぼのぼぼは赤ちゃんという意味らしく、そこから庚申信仰だけではなく安産、良縁、成長、無病息災といろいろ広がりがあります。

庚申の有名どころは大阪の四天王寺、京都の八坂庚申堂、猿田彦神社、尊勝院。東京だと柴又の帝釈天などが現在でも庚申を行っているようですから、猿を買ってみるのもよいでしょう。

三尸(さんし)というのは人間の体のなかにいる虫のことで彭侯子【上尸】・彭常子【中尸】・命児子【下尸】だそうです。いわゆる「虫の居所が悪い」とか「虫が知らせる」などいう時のあの虫のことです。虫はいつもその人の悪事を監視しています。三尸の虫は庚申の日の夜の寝ている間に天に登って天帝(または閻魔大王)に日頃の行いを報告し、罪状によっては寿命が縮められたり、その人の死後に地獄・餓鬼・畜生の三悪道に堕とされるとされています。そこで三尸の虫が天に登れないように、庚申の夜は人々が集まって青面金剛を祀り、囲炉裏を囲んで寝ずに酒盛りなどをして夜を明かすのを庚申待というそうです。また庚申様は月のモノや出産の汚れを嫌うといわれ、女性は主に飯の準備や片付けのみが役目だそうです。庚申待を3年18回続けた記念に建立されたのが庚申塔(塚)で今も各地に残っています。みんなで頑張った記念碑なのです。
庚申塔には「みざる、いわざる、きかざる」の三猿が飾られていることもあり、この三猿(さんえん)が山王信仰になったという説もあります。

三尸説は平安時代に日本に入ったらしく、密教や土俗信仰とも混合し、時代と地方によって変化形がいろいろあります。ある意味、徹夜で明るく飲めや歌えの大騒ぎの日なので、いろいろ変化した形で地方に残っています。「枕草紙」にも庚申待の話が出てきます。「五月の御精進のほど」に「庚申せさせ給ふとて、内の大殿(おほい)いみじう心まうけせさせ給へり」という文が出てきます。宮中では大きな行事の1つであったことが推測できます。長い伝統のある行事でしかも楽しい面が多いので復興してもよい習慣ではないでしょうか。

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