閻魔参りと藪入り



本来は旧暦に行うものですが、今は新暦1月16日に閻魔(えんま)参りが行われます。こうした旧暦の行事を新暦に置き換えることには抵抗感もあるのですが、神社仏閣でも明治以降、抵抗感はないようで「新しい習慣」と考えているようです。その分、失ったものも多いと思うのですが。さて、その閻魔参りですが、閻魔賽日(えんまさいじつ)ともいい、1月16日と7月16日の年2回あります。感の良い方はお分かりのように、1月は小正月、7月はお盆と関係があり、藪入りというお店の使用人の休日です。昔は年2回しか休日がなかった、というと労働運動関係の人から非難されそうですが、当時の西欧は奴隷労働で休みがまったくなかったことを考えると、日本の方がはるかに労働環境はよかったといえます。実際、使用人は住み込みが基本で、食事と寝床が与えられ、技術訓練もありました。そして今でいうジョブ型賃金であり、経験を積んで手代、番頭、大番頭と出世するに連れて給金も増え、信用ができると暖簾分けという独立の資金も得られるという制度でした。一生奴隷のまま主人に仕えるという西欧の封建制度では当然、労働者革命が起きるのも当然で、労働を賃金に換算するというマルクス経済学的な発想もでてくるわけです。

閻魔参りというのは、この日には「地獄の釜のふたも開く」といわれています。といわれてもピンときませんね。調べてみると、諸説あるようで「正月やお盆の16日は地獄の鬼の仕事も休みであるというところから、この両日は生きてる人間もみな休もう」という説(https://meaning.jp/posts/3282)が一番シンプルな回答ですが、「地獄の窯・釜の蓋が開くと、地獄に落ちたご先祖様もこの世に帰ってくることができるようになります。」(https://korenare.com/hell/)というお盆が中心の説もあります。この説の延長に、「古代の日本では新年最初の満月の日(旧暦1月15日)と、半年後の満月の日(旧暦7月15日)の2回、祖霊を祀る風習があり、やがて1月15日のほうは年神を祭る小正月へと変化し、7月15日のほうは先祖を祭る行事へ変化し、この7月15日の先祖を祭る行事と仏教の盂蘭盆会が習合して日本独自のお盆へ発展したという説があります。」(知恵袋histona(n)1582)という説を紹介しています。この説では「平安前期の歌人などとして知られる小野篁は、六道珍皇寺にある井戸から地獄へ通い、昼は朝廷に出仕し、夜は地獄で閻魔大王の補佐をしていたといわれています。あるとき、小野篁が地獄へ行くと、閻魔大王が地獄で苦しんでいる死者の身代わりにみずからの身を地獄の炎で焼いて苦しんでいたため、小野篁は満慶上人とともに閻魔大王を救済するための供養を行なったといわれています。日本では閻魔大王は地蔵菩薩の化身とされ、お地蔵さんと閻魔大王は同一のものと考えられていたので、閻魔大王(地蔵菩薩)を供養して祀った日が7月24日の「地蔵盆」になったようです。」という閻魔祭りと地蔵盆の関係も説明していて興味深いです。さらに面白いのは「1月15日と7月15日に鬼たちは休みをもらいます。休む際に罪人たちが逃げ出さないよう、茹で釜に重石の蓋を載せておくのです。そして翌日の16日、休みから戻ってきた鬼たちは蓋を取ってから閻魔大王に挨拶に赴き、通常営業に戻る、と。ですからこの両日を「釜の蓋も開く」ということになります。こちらのほうが、意味的にはすとんと納得できます。罪人たちをかまゆでから解放する日ならば、「釜の蓋を開ける」ではなく「釜を空ける」とか「釜を抜く」というのが普通の表現になるはずですから。ただしこれでも「蓋も」の「も」が説明できません。この「も」は地獄の釜の蓋ですら」という意味でしょうから、この解釈では逆に説明がつかなくなってしまいます。一方で、盂蘭盆会のある旧暦七月、その一日を「釜蓋朔日(かまぶたついたち)」」または「釜蓋あき」「釜の口あけ」と言い、お盆にあの世からふるさとに帰ってくる精霊たちが、地獄の出入り口をあけてもらい、この世に出発する日だとされます。そして、お盆を自宅で過ごした亡者がふたたびあの世に戻りきるのが七月三十日であり、つまり七月いっぱいは入り口が開け放してあることになります。この説話によるならば、「地獄の釜の蓋」とは、茹でがまの蓋ではなく、地獄とこの世とが通行できないように封じている門のことになります。」(https://tenki.jp/suppl/kous4/2018/01/16/27801.html)釜蓋朔日という表現はこの記述で初めて目にしました。こうした諸説が生まれるのは、疑問に思った人が納得するような自説を展開するからで、言語学では民間語源というのですが、事実かどうかよりも、納得のいく真実が重要という価値観を示しています。

最後にジゴクノカマノフタという植物があることも知りました。キランソウ(紫藍草・金襴草)というのだそうですが、この花にも由来があります。それはまた別の機会に。日本の伝統文化は奥が深いです。閻魔思想については書ききれませんでした。

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