書籍の歴史
昨今は電子書籍が普及し、これは革命の前兆であろうと思っています。実際はすでにSNSが社会運動を起こしており、歴史的に見ると新たな時代に入ったのでしょう。
大昔、情報は口伝のみでした。文字の発明により、記録という行為が行われるようになりましたが、手間がかかりました。古代エジプトのヒエログリフを見ると、ほぼ絵ですから、粘土板に掘るのも大変だったことでしょう。メッセージを頭の中にしっかり入れておき、思い出しながら、文字にしていったわけです。それも意味の伝達なので、言った通りに書いたわけではありません。楔文字になって表音化して、言ったことに近づいたと想像できます。それでも時間はかかりました。やがて文字が羊皮紙や紙などにインクで書けるようになると、速く書けるように文字も簡略化されていきます。アルファベットの語源である、アルファは牛の意味で牛の頭の形から変化しました。ベータは家の形から変化したものです。アルファベットになった時点で表意文字ではなくなりました。全く同じことが、日本でも起こり、表意文字として輸入された漢字が万葉集のようにヤマトコトバの表音文字として使われるようになると、次第に崩れて、それが仮名という表音文字に変化していきました。
こうして紙(木や竹のこともあります)にインク(墨も含む)で書いたものが本の原型です。この書き記すという形式は長く続き、記録から詩歌の著作、そして文書公布へと用途も拡大していきます。個人の記録として日記ができ、貴い方の話されたことを記録した聖書や経も残っていきます。これらの原本はすべて1冊しかありません。しかし多くの人が読むためには写本が要ります。それでも手で写すしかありません。
そして、さらに多くの人の目に止まるために印刷という技術が発明されます。日本では瓦や木に彫る手法ができましたが、西洋では活版印刷という活字を使う方法が発明されました。それにより、教会秘蔵の手書き聖書写本が印刷と翻訳という手段で、多くの人が内容を知るようになり、宗教革命へとつながったのは有名な話です。
一方で、音声そのものを記録したり、放送という手段で拡散する技術が生まれ、字の読めない人も情報に接することができるようになりました。ただ音声は揮発性情報つまり、その場で消えていく情報です。それでもラジオや電話が普及していきました。電信や電波という媒体の利用により、不特定多数への情報伝達が容易になりました。そして肉声という文字では得られない情報も伝達でき、非言語情報も活用されるようになります。ラジオが多くの人の感動を呼び、また戦争へと導いた歴史もあります。
現在では電波や電信という目に見えない媒体で、しかも不揮発性の情報が利用されるようになりました。これは印刷よりはるかに大量に拡散できます。これが人間社会に与える影響は発明者も利用者も想像できない方向への変化をもたらす可能性を歴史が示しています。
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