辞書
5月25日は1955年に『広辞苑』の初版が発行された日だそうです。現在は2018年(平成30年)発行の第七版です。広辞苑は国語辞書としての役割もありましたが、百科事典の役割もありました。何かというとこれで調べて引用したので、今のwikipediaのような使われ方をしていました。物書き達は初版からずっと持ち続けたものです。というのも昔のことを調べるには古い辞典も必要だからです。個人で持つのは場所もとりますし、お金もかかるので古い版は図書館で見るのが普通で、自作に引用する場合も「広辞苑第〇版によれば…」のような記述をしました。初版の所載語彙数は20万語で第7版の現在は25万語になっています。単純に5万語増えたのではなく、改訂のたびに削除された語もあり、追加された語もあります。広辞苑は中型の国語辞典で、最大のものは『日本国語大辞典』(全13巻、小学館)で約65万語です。よく誤認があるのですが、これが日本語のすべて、つまり日本語の語彙は65万語と思う人がいます。語彙というのは「すべての語数」ですが、日本語には古語が多くあり、方言もあり、死語もあります。またこれからもどんどん新しい語彙が創造されますし、外来語も増えてきます。結論からいうと日本語語彙は無限なのです。語は従来ある語を組み合わせたり、語を形成している形態素を組み合わせたり、外国から借用したり、といくらでも増やしていけるシステムです。これはどの言語でも同じです。英語を勉強していると日本語よりも多いような感じがする時があります。英語の辞典として有名なオックスフォード辞典はOxford English Dictionary略してOEDといいますが、所載語彙数は約60万語で日本国語大辞典とそれほど違いません。辞書は印刷に制限があるため、この辺りが限界のようですが、最近のように電子辞書が普及してくると所載語数は無限に広がると思われます。
大きな辞書は持ち運びに不便ですし、ちょっと調べるには小型の辞書が便利です。そこで英国ではPocket Oxford Dictionary(POD)やConcise Oxford Dictionary(COD)が普及しました。その日本語版が国語辞典です。また英和辞典や和英辞典も小型版が作られコンサイスとして学生が持つようになりました。昔は中学から英語学習が始まるので、三省堂コンサイス英和辞典を買ってもらうと英語の勉強が始まるという期待感があったものです。実際には他の出版社からも英和辞典が出ていましたから、学校ごとに採用が決まるようになって、だんだん市場も変わっていきました。どこの家庭にも国語辞典と英和辞典がありましたから、売れ行きは相当なものです。英語以外の言語を学ぶようになると辞典も増えていきます。使わなくなった辞書は大抵、本棚に飾ってあるので、その家の言語学習状況は一目でわかりました。
もっとも辞書がある、ということと中身を覚えていることとは別物です。よく「私は中学以来、何年も英語を勉強したが身につかなかった」という英語教育批判をする人がいますが、勉強したことと身につくことは別です。それに本当に勉強したかどうかも疑問が残ります。「英語学習の時間を過ごした」だけかもしれません。大学になると、4年間勉強した、と自信をもって言える人はかなり少ないと思います。正に4年間大学生活を過ごしただけの人がほとんどでしょう。中にはバイトと遊びが忙しくて大学にほとんど通わなかった人もいることでしょう。それでも「大学を出た」というプライドだけが残っている人もよくみかけます。厳しい言い方をすれば日本の大学生は「入学試験に通った」という証明でしかないです。しかし欧米の大学は出るために相当勉強しないといけませんから、出たことに意味があるのです。大学はやり直しがなかなかききませんが、辞書は持っていればいつでも学習できます。飾りにしておかないで、たまには中を開いて見ると意外な発見があるかもしれません。ネット検索は知りたいことをすぐに調べられる便利さがありますが、辞書には偶然の発見があります。
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