創造の誤解
創造するcreateというと、ゼロから何かを作り出すようなイメージをもっている方がいますが、実際には「新しい組み合わせ」のことです。たとえば料理を考えてみると、材料は普通にあるものですし、調味料もあるものです。料理器具も普通にあるものです。料理法も切る、煮る、焼く、蒸す、などこれまでにある方法です。しかし少し材料を変えたり、調理時間を変えたり、調理器具を変えたりすることで新しい料理ができます。調味料は加える種類と量で味がまったく変わります。
絵を描く時も基本は紙や布の上に絵の具を筆で塗る作業はほぼ同じです。しかし出来上がった作品は正に創造的です。写真やCGでも基本原理は変わりません。文章に至っては今ある言語の組み合わせが基本で、文字や音声は新たに創造することは滅多にありません。
創造の基本は新しい組み合わせにあり、その組み合わせ方がアイデアということです。むろんゼロから作り出すことがないわけではないのですが稀有です。ゼロから物を作り出すのは神の創造であり、天地創造のように神の技です。
原子力のように新しい元素を作り出すこともありますが、核分裂にしろ核融合にしろ、元になる原子がないと創成できません。ゼロからの創成ではなく、変化させているのです。一般に創造と変化は別物と考えがちですが、ほとんど違いはありません。
唯一違いが明確なのが生命です。生育は変化過程ですが、誕生と死は変化のようでいて、実際には何かが発生して、何かが消滅します。日常的に経験することなのですが、いまだに生命を創造できていません。一方、消滅させる手段はたくさんあります。しかしそれはあくまでも手段であって、結果的に消滅させることはできても、直接生命だけを消滅させることは不可能です。
創造はいまある手段と材料を用いて、新しい組み合わせにより物を作り出すことと理解しておくと、案外、創造は簡単かもしれません。試行錯誤は正に一定条件下で組み合わせを試すことです。その組み合わせは有限ですが、あらゆる組み合わせとなるとほぼ無限です。組み合わせる要素が多ければ多いほど無限に近づいていきます。その組み合わせの中で「利用できるか」という価値判断で選択されたのが創造の結果、ということです。創造とは有用性のある組み合わせということですから、利用方法がないと捨てられてしまうのです。その有用性も時代、場所、人によって価値判断が違います。有用性つまり役に立つかどうかとなるとかなり限定的になります。まして利益がでることを価値判断基準にすると、やってみなければわからなくなります。それで難しく思えてしまうわけです。価値判断基準を変える、これは案外、難しいです。
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