立夏


スズラン

月日の経つのは早いもので、もう立夏です。立夏は二十四節気のひとつで太陽黄経が45度になる日です。旧暦でも季節の流れを感じられるように定められた日です。語節句のように日付で固定された行事と自然の流れによって定められた二十四節気がうまく組み合わさったのが旧暦で、新暦との日付のズレばかりが強調されて、明治時代に廃止されてしまいましたが、今でも天気予報による季節感と新暦とのズレは残ったままです。季節が緩やかに変わる日本では、立春、立夏、立秋、立冬と四季に分ける習慣が今も残っています。その季節の移り変わりを感じる節目が二十四節気です。

立夏は新緑が目立ち、植物が生い茂り、生命力が溢れる季節で、緑の大切さを教えてくれています。立夏は梅雨の前触れでもあり、ジメジメとした気候の始まりでもあります。植物には水分が不可欠であり、雨に濡れた葉の美しさもよいものです。

立夏には、古くからさまざまな風習があり、中国では「吃蒸籠」(ちしゅんろん)という籠蒸しパンを食べる習慣があるそうです。コンビニでは熱い肉まんは冬のものにされていますが、冷めてもおいしいものもあるので、肉まんや餡まんを食べてみるのもよいのではないでしょうか。この習慣は夏の到来を祝うとともに、食物による健康への願いを込めたものだそうです。

日本では昔から「鯉のぼり」が立夏になると飾られます。鯉のぼりは縁起物として、男児の健やかな成長を祈るために飾られるため、今では五月の節句のものと思われてしまっていますが、これは端午の節句の菖蒲が尚武と語呂合わせで、端午の節句が男の子のお祝いとなってしまったことの影響です。

立夏の頃には初めてトンボが飛ぶようになる地域もあります。蛙が鳴き始めたり、ハルジオンやスズランが花を咲かせるなど自然の変化が観察されます。地方によっては稲の苗が植えられる田植えの時期でもあり、農業にとっても重要な日です。

立夏は夏の初めとして暑さや湿気による健康被害が心配されます。水分や塩分をしっかりと補給し、夏の健康管理を意識する日でもあります。夏野菜や果物が美味しい時期でもあり、料理やデザートが楽しみになってきます。

現代では二十四節気に関する風習や文化が忘れ去られつつあります。暑さによる健康被害や梅雨による影響なども、エアコンや除湿器などのテクノロジーによって緩和されるようになりましたが、自然と共に生きるという大切なことを忘れてしまうことは、人々の生活や健康や精神文化に悪影響を与えることもあります。自然は脅威でもありますが、楽しみでもあります。自然と戦うばかりでなく、自然を受け入れることを思い出すのによいのが立夏でもあります。

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