黒板の日
5月9日は黒板の日だそうです。語呂合わせです。黒板はblackboardの直訳です。英語でも1語になっていて、1つの名詞です。Black board のように2語にすると「黒い板」になります。同じような合成語にはblackbird(つぐみ)やlighthouse(灯台)などがあります。昔の黒板は本当に黒色でした。初期のものは木の板に墨汁を塗り、その上から柿渋を塗ることで色落ちを防止していました。その後、チョークの白い文字を見るのは黒色より緑色のほうが目が疲れないなどの理由から、1954年(昭和29年)に日本工業規格(JIS規格)の規定により、黒板の色は黒色から緑色に変更されました。しかし名詞としての黒板はそのまま残り、現在のような緑色の黒板になりました。たぶん子供たちはなぜ黒板というのか不思議でしょうね。チョークも昔は粉がいっぱい出るので、先生の袖口はチョークで真っ白でした。チョークも昔は白墨と言ってましたが、その後、色チョークが増えて、今では白墨という言い方はしないと思います。墨とは黒いものなので、白墨というのも意味が矛盾した合成語でした。
今では教室以外で黒板を見ることは少なく、会議室ではホワイトボードに専用ペンで書くというスタイルになってきています。ホワイトボードは白板という表現もまだ使われています。最近のインターネット会議ではホワイトボードという機能もあり、もはや板でもなくなりました。
しかし手書きということはいつまでも有効のようです。昔の教室では先生が黒板に書いたものを生徒は必死に写すという形式がよくありました。プリントを配る先生もいましたが、事前に書いたものだと即時性に欠けるのと、印刷にはかなりの手間と費用がかかるので、板書という方法が普及していました。今ではコピーや印刷も簡単になり、オンライン教育が普及した現在はダウンロードという方法も広がってきました。書く先生の方も板書ではなく、プレゼンテーションソフトやキーボード入力に変わってきています。先生方はそれで楽になったかというと、反対で、準備に時間がかかり、大変になったという話を聞きます。生徒の方は板書を写すという作業がなくなって、学習力は落ちているようです。書き写すことで記憶も少しは残るのですが、ダウンロードは内容を見ないままなので、記憶に残りません。そしてオンライン授業だと先生方はどうしても情報過剰になりがちです。口頭で板書、というスタイルだと進度はどうしてもゆっくりになります。ゆっくりな授業にはメリットも大きいのですが、教える側が教えたいことを詰め込むと、同じ時間に詰め込まれる情報量は相当なものになり、生徒の負担が増えるだけでなく、学習効果も落ちます。いわゆる新幹線教育になってしまい、通過駅の生徒は深海魚になってしまわざるを得ないのです。
黒板の日、改めて板書について再考してみる価値はあると思います。
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