夏至
2022年6月21日は夏至です。夏至は二十四節気の一つですが、天文学的には北半球だと昼が一番長い、南半球だと昼が一番短い一瞬のことです。冬至や春分、秋分もそうですが、太陽や地球は常に動いているので、その瞬間は一瞬なのです。しかし慣習的にはその一瞬のある日を夏至日、冬至日とし、一般に夏至とか冬至と呼んでいます。
冬が長い北欧では夏至祭が行われます。町の広場に植物で飾られたポールが立てられます。イギリスなどでは五月祭に立てられるメイポールがありますが、北欧では5月だとまだ花が少ないので夏至祭に同じようなポールが立てられるのです。スウエーデンでは夏至は最も大事な日でこの時期に合わせて夏休みを取る人もいるくらいです。この時期は緑が美しく花が咲き乱れ、家族で夏の湖や海の近くの別荘に行きます。
広場のポールの回りで輪になって歌を歌い大人も子供も踊ります。夏至祭にはニシンの酢漬け、茹でたジャガイモ、サーモン、スペアリブを食べ、食後にはこの夏採りの苺がです。日本でいうバイキング料理、スモーガスボードも出て、酒もでます。当日の夜、結婚を願う女性が7種類の草花を枕の下において寝ると、恋がかなえられるという言い伝えもあるそうです。デンマークでたき火を焚いて魔女の人形を燃やします。魔女の衣装にはかんしゃく玉が隠してあって、爆発と共に魔女は黒い森のブロクスビェルク山(悪魔の住みか)へ帰って行くという伝説があります。欧州のキリスト教国ではこの日前後が聖ヨハネの日でバブテスマのヨハネの誕生日が24日とされているのですが、それはイエスキリストの誕生の半年前に生まれたと聖書(ルカによる福音書)の記述によるものです。夏至と時期が重なるのは、元々夏至の祭りがあってそれに合流した形であり、クリスマスが冬至の祭りと重なっていることと同じ現象です。聖ヨハネ祭の前夜には魔女や精霊が現れるという言い伝えがあり、その夜を舞台にしたシェークスピアの『真夏の夜の夢』もこの伝説を背景としています。
日本では夏至は大きな祭りではなく、冬至や春分、秋分に比べると印象が薄いです。とくに冬至には「ん」のつく食べ物があり、春分のぼたもち、秋分のおはぎのような定番があるのですが、夏至にはそういう伝統もありません。それでもこの時期に食べるとよいとされているものが地域ごとに存在するようです。関西ではタコだそうで「タコの足のように稲の根が広く深く張るように」という田植えの後の願いが込められているそうです。8本の足は末広がりなので縁起もいいかもしれません。関東では小麦餅という小麦粉ともち米を半々にして搗いた餅の焼きもちを食べる地域もあるそうです。尾張地方ではいちじく田楽というのもあるとか。しかしどれも現代ではみかけなくなりました。夏至は二十四節気では10日間あるので、京都では最終日に「水無月」というお菓子を食べるそうです。水無月というのは白ういろうの上に小豆を乗せて三角に切った和菓子です。6月30日が一年の真ん中なので夏越(なごし)の祓(はらえ)といい、半年の間に身に溜まった穢れを落とし、残り半年の息災を祈願する神事です。神社には大きな茅(ち)の輪が据えられ、参拝者はここをくぐって厄除けを行います。これが茅の輪くぐりです。神社ごとに作法がありますから、神社で教わりましょう。人形(ひとがた)に自分の名前や年齢を書き、体をなでたり、息を吹きかけたりして、罪や穢れを託します。茅の輪くぐりの後で人形は身代りとして神社におさめたり、川に流したり、火で焚き上げたりして、残り半年の息災を祈願します。
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