虫歯


虫歯

虫歯というのは不思議な日本語です。語源ははっきりしたものはないようで、昔から日本人はカラダに起こるさまざまな病気の原因が”虫”であると考えていたため虫が原因で起きる歯の病気だから、虫歯と呼んだと言う説と、虫が葉を食べるように、歯に穴が空くから、虫食いに喰われたように歯がボロボロになるから、”虫歯”と呼んだと言う説があるようです。どちらも納得いくような、いかないような、モヤモヤ感が残りませんか?

また、虫食いの歯を語呂合わせで数字に置き換えて”64918(むしくいは)”と書き、すべて数字を1つずつ足していくと”6+4+9+1+8=28”になり、ヒトの歯は親知らずを除いて28本あるから、”虫食いの歯=虫歯”と呼ぶという説明もあるそうです。こうなると語呂合わせに、数字マジックを組み合わせたので、おもしろいですが、完全に後付けでしょう。

少しずつ歯をむしばんで侵していく病気だから、”蝕む(むしばむ)”という言葉から”むし歯”と呼んだとも言う説もあります。”蝕む”という言葉は”蝕まれた歯”から”蝕歯(うし)”という虫歯をあらわす別の呼び方にもつながります。

ではいつから虫歯という表現があるかというと、記載されたのは平安時代の円融天皇の勅により編纂された三十巻からなる「医心方」で、この書物は現在現存している医書の中で最も古いものです。その中に「齲蝕」なる語があり、これを日常の話し言葉で「ムシカメハ」、「ムシバ」、「ムシクイバ」などと呼んでいたそうです。漢字で「齲蝕」と表記し、医者や知識人は中国語の発音に近い「ウシ」と呼んでいたのかもしれません。齲蝕は歯を喰う虫から引き起こされていると広く信じられていたようです。だいたい鎌倉時代頃より、書くときは「齲蝕」、話すときは「ムシバ」と呼ぶようになったそうですが、明らかなことは分かりません。しかし江戸時代になってむし歯(ムシバ)なる語が書かれたり、話されたりするようになったことは次の芭蕉の俳句からも想像できます。「結ぶより 早歯にひびく 泉かな」(手に泉の水をすくうと、口へ運ぶより先に、水の冷たさが歯にしみるように感じる。)これは歯槽膿漏の可能性もあります。「衰へや 歯に喰いあてし 海苔の砂」これは芭蕉が海苔を頬張ったときに、混じっていた砂を噛んでしまい、ズキンと痛みを覚えたその瞬間に身の衰えを切実に感じたのだそうですから、こちらは虫歯の可能性もあります。小林一茶の句にも「歯が抜けて あなた頼むも あもなみだ」(最後の歯を失って歯の大切さを悟り、「南無阿弥陀」の唱えようとするが、歯が無いため「なむあみだ」ではなく、「あもあみだ」となってしまう。)という意味です。有名俳人も歯を病んでいたのですね。

歯に令をつけた漢字で「齢」を「よわい」と訓み、人間の年や人生・生命を示しているのも、まさに人間の歯の変化が、その人の齢を表すことからきているのでしょう。縄文人の化石から、彼らも虫歯だったことがわかったそうで、虫歯は人類と共にあるといえます。現在でも治療はできますし、歯磨きで予防はできますが、やはり自分の歯は大切にしたいものです。

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