マンションとmansion
日本語の外来語と原語の意味が異なるのはいろいろあります。サービスなどは一部、意味も重なっていますが、マンションとmansionは全く違う例です。英語のmansionはお屋敷、豪邸のことです。ディズニーのHaunted Mansionホーンテッドマンションを見ればわかるように、英語圏でのmansionは〇〇邸ということなので、持ち主は個人です。そして家屋部分はhouseといい、家全体がmansionです。よくあるのは道路に面してgateがあり、そこから通路passを通って、玄関の前に車寄せがあります。これをporte-cochereまたはporchといいます。日本のポーチとは違いますね。玄関を入るとhallがあり、そこから階段を上がって二階または、そのまま客間に行くこともあります。映画などでよく見るシーンです。
日本のマンションは高層共同住宅で、持ち主は複数です。2階建て、3階建てなどはアパートやコーポなどと呼ばれることが一般的で、マンションは高層であるイメージです。高層マンション、タワーマンションはありますが、タワーアパート、タワーコーポがないことからもわかります。
どうしてこういうことになったのかというと、これらの語がカタカナであることが理由です。共同住宅は昔からあり、長屋と呼ばれていました。長屋というと江戸時代の貧乏長屋を連想しがちですが、武家長屋などもあり、人口の多い町である証でもありました。武家でも一軒の家を構えることもあり、それらは屋敷と呼ばれていました。今でいう一軒家です。
共同住宅がカタカナ化したのは不動産屋のキャッチコピーからです。今でも不動産屋はよくわからない外来語で売り込んでいます。マンションを万の連想から、1億円以上する部屋を億ションというあたりから、日本語の合成語になりました。マンションの派生語ではありますが、ションだけでは無意味ですから、独立語ではなく、言語学でいう拘束形態素になったわけです。またアパマンという語も生まれました。この場合もアパやマンだけでは独立語にならないのですが、意味があるので拘束形態素の連結ということになります。
こういう派生は英語のmansionにはないので、日本語独自の進化いわゆるガラパゴス進化の言語例といえます。日本の省略語は2つの語の最初の2音をとってきて合成するのが定番です。これは漢語の合成の習慣が延長されたのかもしれません。そのため2音ですが、意味が残っています。英語の場合はアルファベットの最初の文字だけを合成するので、ほぼ無意味で元の語が連想しにくいしくみです。また同じ省略語が多くの意味をもつような結果になります。
日本のマンションに相当する英語はcondominiumコンドミニアムがだと思います。略してcondoということもあります。ほぼ日本の分譲マンションと同じ意味です。賃貸だとapartmentということが多いです。アパートだけでは通じません。日本のワンルームマンションは英語的には意味不明です。「1部屋の大邸宅」で何でしょうね。ちなみに部屋でもapartmentなので、建物全体の意味ならapartment buildingにしないとアパートを買って経営することにはなりません。
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