産みの日
「海の日」の語呂合わせで「産みの日」というのもあるそうです。別名「性教育の日」だそうで、今年はLGBTQ+問題もあって、議論が活発化するかもしれません。「妊娠や出産に関わる直接的な性行動だけでなく、ジェンダーや人権、人との関係性などを含む広義の性教育の啓蒙活動を行い理解を促すことが目的。記念日を通して多くの人が性教育の必要性を理解するきっかけとし、いのちの尊さ、相手を尊重する心、自分を大切にすることを考える一日にしてほしいという願いが込められている」(日本いのち心アカデミー協会https://www.inochikokoro.com/)が制定したそうです。「包括的性教育」ということで0歳から始めようという提案です。この協会はホームページだけで、代表名はあるものの、住所などの連絡先がなく、役員も記載されていないので、正体が不明なのも気にかかるところです。性教育にジェンダーや人権、人との関係性などを含むという思想は自由ですが、啓蒙活動としては焦点が漠然としてしまい、かえって一般の理解をえにくくなる懸念があります。
LGBTQ+は性の問題ではありますが、妊娠や出産とは逆の行動であり、「産みの日」というネーミングと矛盾する印象を受けます。0歳からの教育、という発想にも違和感があります。自己判断ができない幼児から、特定の思想に染めてしまうことはそれこそ人権問題ではないでしょうか。この協会の主張そのものに反対しているのではありませんが、運動目標を過大に拡大していくと、成功しない、というのは歴史が教えています。本コラムで折々ご紹介している旧暦の習慣も「すべて旧暦に戻せ」と主張しているのではありません。まして新暦をなくせ、と考えているわけでもありません。行事や習慣は新暦でも旧暦でもよく、両方でもよい、という緩い考えです。英語でいうand, orという選択です。A and B, and A or Bです。Either or bothでも同じことです。欧米の思想は二項対立的で排他的ということがよくいわれますが、必ずしもすべてがそうだとはかぎりません。宗教の世界はどうしても排他的になりがちですが、日本の場合、排他的原理よりは包括的原理が働き、神仏混淆や本地垂迹などが行われてきました。大晦日に寺参りして正月に神社に初詣に何の抵抗もありません。寺も神社もおみくじやお札をだしています。キリスト教風の結婚式もあります。最近ではハラル・レストランも抵抗なく存在しています。
LGBTQ+も欧米では排除されてきた歴史があり、今、それに対する抵抗運動や反運動もありますが、日本がそれに巻き込まれる必要はない、と思います。日本の性感覚は昔から緩く、排他的ではありませんでした。そうした風土の中で、英語を冠した法律を施行しようと無理している感があります。正式名は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」というそうですが、まだ日本語として不安定なカタカナ語のままでは国民の理解をえられないは当然といえます。上記の協会はこの法律をどう考えているのでしょうか。
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