最適化の罠
ITの世界では最適化という表現が頻繁にでてきます。非専門家にはよくわからない概念ですが、実際にアプリやデータ保存などの作業をする時によくでてきて戸惑う人が多いとおもいます。IT業界でいう最適化というのは入力フォームの最適化とか検索エンジンの最適化のように使われ、それぞれ「使いやすいように仕様やデザインを改良していくこと」「検索結果が上位になるようにウエブページを書き換えること」という説明がなされています。易しい日本語にすれば「よくなるように工夫する」という意味にしかすぎず、どうすればよいかの方法を示しているのではないので、結果を見て判断することになります。言い換えると、どれが正解かわからないので、いろいろやってみる試行錯誤の技術といえます。
最適化の元になったのは数学の「最適化問題」であろうと思われます。詳しい説明は関係書物で勉強していただくとして、数学では数理最適化と組み合わせ最適化、並列最適化という問題があり、コンピュータ世界、IT世界では組み合わせ最適化を応用した考えかたであろうと考えられます。コンピュータ世界ではコストパフォーマンスやファイルの断片化を解消すること(デフラグ)の技術を意味することから始まり、それがマーケティング業界に応用されたのが入力フォームや検索エンジンの最適化と汎用化されたのが現在の状況だろうと思います。意味が変化したのです。
見方を変えると、この用語そのものが離散的(descrete)な問題へと広がり、問題が多様化したので、正に最適化して、効率のよい理解(解)が求められています。しかし未整理のままです。
数学や情報科学の素人の目から観察すると、最適化の対象とするデータや諸問題はすべて過去の現象であり、現在の時点で選択した最適化した選択が将来にわたって最適であるという保証はまったくありません。従って、最適値を予想したり、推測することは不可能です。マーケティングとして考えるのであれば、目的が利益を最大にすること、とすると、最適化の解は永遠になく、試行錯誤した結果、後に判明ということになります。政治の世界なら後世の歴史家が正否を証明する、ということになります。マーケティング理論の世界では、巡回セールスマン問題とか、中国人郵便配達問題、ナップサック問題などおもしろいネーミングの課題があります。興味があれば検索して勉強してみてください。それぞれ効率の問題が示されていて、クイズ感覚で楽しめるかもしれません。最適化の問題にかぎらず、用語を転用すると誤解が生じやすいです。最適化は本来は数学用語で、近接領域である情報科学やコンピュータ科学の人々が転用し、それをソフトウエア関係の人々がさらに転用したため、原義とは異なった意味に展開して広がったといえます。原義を知らない人には新鮮かもしれませんが、原義を知っている人には戸惑いしかありません。日本語の「ヤバイ」は元は危ないことを意味していたのが、近年は「おいしい」「楽しい」に転用され、古い世代が戸惑っています。最適化問題も同じような言語現象といえます。
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