ジェスチャーの不思議


ジェスチャー

言語が通じない時、自然にジェスチャーでコミュニケーションしようとしますね。なぜなのか、未だによくわかっていません。そして子供の言語獲得の段階では、言葉の前に身振りの獲得があります。またペットなどの動物の訓練にはハンドサインのような身振りと言葉で行います。これらのよく知られた事実から類推すると、身振りは人間の進化の古い時期に獲得した能力だといえそうです。相手の動作から情報を読み取る能力は人間以外の動物にもあり、ハンター型の動物は獲物の動きをじっと観察します。また争う時は相手をじっと睨んでいます。動物を訓練する場合も条件付けに音や動作を用います。人間の都合で、言葉と同時に動作をしますが、だんだん言葉だけ、あるいは言葉なしの動作だけて反応するようになります。言葉だけの方がより高度の理解のようで、動作の方がより正確に指示できるようになります。つまり動作から情報を得る能力はかなり早い段階で進化したと考えるのが自然です。人間の場合、動作から情報を得る受信能力だけでなく、両手が自由に動かせるため、発信能力も多様で多彩になったといえます。これは直立歩行と関係がありそうです。これはサバンナで活動するチンバンジーや二足歩行の多いゴリラやオランウータンなどの類人猿でも、両手を使うことで、道具を使用したり、コミュニケーションをすることからも推測できます。さらに人間は生まれるとまず四足歩行、つまりハイハイから始め、立つようになってくると動作が増え、コミュニケーション能力が発達してくるとことが観察されています。発音による初語の発出は平均的に生後12か月前後といわれていますが、手話のような動作理解は生後6か月前後のようです。つまり動作理解は言語理解に先行するわけです。人間の子供は動物に比べ、いわゆる「未熟児」の状態で生まれてきて、人間らしくなるのは1歳を過ぎてから、ということのようです。動物は生まれてすぐ歩行でき、自分で哺乳できますが、人間の赤ちゃんは自力では哺乳できず、母親が授乳します。なぜ未熟児状態で生まれるのかについては諸説あるようですが、どうやら脳の大きさが関係しているようです。頭蓋骨は他の器官に比べて成長段階が異なります。生後2年間で、産後の約4倍に急成長します。「小さく生まれて大きく育つ」のが脳ということになります。また現生人類と古代人類では形も大きさも異なります。脳の容積も進化してきたといえます。容積の増大により脳の発達も並行すると考えるのが自然であり、音声言語の発達は3歳、6歳と進んでいきます。この言語発達と文化の獲得は同じです。ジェスチャーについても、幼児期のものは人類共通的なものがほとんどですが、次第に言語文化の方向に発達していきます。先にジェスチャー能力があるので、そこに言語発達が付随する形になります。それが言語とジェスチャーの発信が同時であることの理由が求められそうです。「お金」というジェスチャーは日本ではOKサインと同じですが、外国の多くは紙幣を数える仕草です。お金は動物は理解せず、人間社会で高度に発達した道具なので、成長後に獲得した文化といえそうです。

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