音調の不思議


スピーキング

ジェスチャーと表情は人間の行動であり、受信者は視覚的情報として受け取ります。コミュニケーション手段としては、視覚情報だけでなく音声情報も利用されます。音声情報は音素のように分節できる要素とイントネーションなどのように語や文などの単位全体に被さる、かぶせ音素(超分節音素)があります。日本では英語の発音というと音素のことばかりを気にしますが、コミュニケーション上はむしろかぶせ音素の方が意味機能を果たすとされています。日本語では五十音という音素に相当する単位がモーラという日本語独特の要素が核となり、それにアクセントと称する強弱と高低が一緒になったものが被さっています。つまり分節音素と超分節音素という二重構造は同じなのですが、それぞれの単位が異なっている、珍しい言語です。そしてそのアクセントによって同音異義語などを識別しているのですが、実際には方言で異なっていても、文脈から判断して識別しています。ハシは端、橋、箸などが標準アクセント(NHKなど)では決まっていますが、運用上はバラバラです。いいかえると日本語はアクセントについても緩い感覚といえます。この習慣を英語学習にも持ち込まれ、英語の時間にイントネーション(抑揚)やストレス(強弱)の位置、ストレス・パタンはきちんと教えられません。その結果、英会話で聞き取れない、間違って伝わるなどの現象が起きています。

実はいわゆる発音という個々の音は日本英語のままでも、イントネーションなどの音調が正しければ、きちんと伝わります。英語の上手な日本人の英語を聞いていると、音調が正しいので、発音が日本英語のままであることがよくあります。学校英語ではほぼ音調教育がないので、英会話教室ではもっぱら音調教育に力を入れています。それが「実用」の中身です。

欧米ではパブリック・スピーキングという科目がほぼ必修であります。要するに演説の仕方ということですが、政治の演説だけでなく、プレゼンやクラスの発表でも音声によるものが重視されているので、その技術を学ぶ時間です。日本では「話し方教室」はアナウンサーの学校かカルチャーセンターしかないと思います。この話し方は語彙の選択の方法や表現法だけでなく、本当は発音の高低、リズム、音調を習うとより効果的です。たとえば低い音でゆっくり話すと説得力のある落ち着いた雰囲気になりますし、反対に高音で早い速度で話すと相手の興奮を呼び起こします。ラップ音楽、アジ演説や情報提供のYouTuberなどは高音高速の話し方をします。落語などは題目にもよりますが、人情噺や怪談噺などは低音低速の話し方になります。練習して自然にそうなるのですがそれを技術として学ぶ科目がパブリック・スピーキングです。各個人が音の高低、リズムなどの音調をコントロールして、効果をもたせるように訓練するわけです。この音調による心理的効果は人類に普遍であるとされています。動物にも効果があるとする説もあります。

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